2023/05/22
防災・危機管理ニュース
このほど公開されたD.Chem-Coreは、災害・事故等に伴い環境中に化学物質が突発的に排出された場合に必要となる情報が一元的に管理されていて、①緊急時に対策が必要な化学物質を特定する、②リスクの時間的・空間的及び質的な特徴を迅速に把握する、③実態解明のための手法を入手する、などに役立つ情報が入手できる。掲載している化学物質は、健康や環境に影響を与えるもの数千種類に及び、国内外のさまざまな化学物質やリスク管理のサイトとも連携している。例えば、排出した化学物質の毒性を調べたり、気象データとの連携により排出拠点の風向きや風力を把握することも可能だ。また、国土交通省が公開しているハザードマップポータルサイトと位置情報を共有して浸水リスクの高い地区内の取り扱い事業所を調べるといった活用方法もできる。
使い方は、事故の発生前から復旧段階に至るまでさまざまで、「状況別メニュー」の中から、「事前」「発生直後」「調査・検討」「事中の対策」「事後の対応」と、局面に応じて選ぶことができる。災害・事故等に伴い環境中に突発的に化学物質が排出されるような事象の場合は、状況が刻々と変化するため、利用者が知りたい情報を迅速に収集できるように整理している。また、ある工場が事故や自然災害で被災したような場合は、「目的別メニュー」の中から「地理情報」を選択し、地図上から当該事業所の場所を選べば、管理している化学物質やその毒性などを把握することが可能になる。
米国では、化学物質の事故対応を支援するシステムとして、緊急時応急措置指針(Emergency Response Guidebook、ERG)や「WISER」と呼ばれるシステムが整備されているが、国内で化学物質対応に必要な情報を一元管理できる仕組みがこれまでになかった。環境省では、今後、地方公共団体の担当職員向けに講習会等を行うことにより、当サイトの普及を図って行く予定。また、情報の蓄積やシステムの改良は継続的に実施し、掲載情報の充実を進めることで、より良い情報基盤にしていきたいとしている。なお、システムの運営は、今後も国立研究開発法人国立環境研究所が行っていくとしている。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方