フリーランス新法によるフリーランスの保護強化
安心して働ける環境を整備する

毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2023/06/06
ニューノーマル時代の労務管理のポイント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、日本テレワーク協会会員。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
「特定受託事業者にかかる取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」といいます)が2023年4月28日に成立しました。施行日は、「公布の日から起算して1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日」とされていて未定ですが、遅くとも2024年秋頃には施行予定です。そこで、今回は、フリーランス新法が制定された背景や法律の概要について解説します。
フリーランスとは、特定の企業等や組織に所属せず、また従業員を雇用せずに一人で企業等との間で請負契約や業務委託契約を締結して業務を受注する者のことをいいます。近年の働き方の多様化に伴い、フリーランスとして働く人は、増加傾向にあります。しかし、フリーランスは、原則として労働基準法上の「労働者」とは認められず、労働関係法令の適用がありません。そのため、取引先の企業等との関係において、労働者に比べて弱い立場に置かれます。また、取引条件が不明確で、報酬の支払いが遅延したり、一方的に減額されたりするなどのトラブルも少なくありません。
このような状況を踏まえ、2020年7月17日に閣議決定された「成長戦略実行計画」に基づき、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。フリーランスガイドラインでは、事業者とフリーランスの取引について、独占禁止法、下請法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、フリーランスと取引を行う事業者が注意すべき事項や法令違反となる行為類型が具体的に示されました。
さらに、2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に基づいて、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的として、フリーランス新法が制定されることとなりました。
この法律は、立場の弱いフリーランスを保護することを目的として、フリーランスと取引をする企業等に対して、取引内容の明確化や60日以内の報酬支払い、ハラスメント対策などフリーランスの就業環境整備に係る措置を義務付けるものです。この法律の適用対象となる当事者や取引、企業等に義務付けられる具体的措置の概要は、次のとおりです。
(1)適用対象
フリーランス新法の適用対象は、「特定受託事業者」に該当するフリーランスと「特定業務委託事業者」に該当する企業等との取引です。フリーランス同士の取引や消費者が取引相手の一方となる、いわゆるB to Cの取引には適用されません。
■対象となる当事者と取引の定義
②「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいう。 ③「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。 ④「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいう。 ※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。 |
(2)取引の適正化
特定業務委託事業者(以下「委託事業者」といいます)は、特定業務受託者(以下「フリーランス」といいます)に業務を委託する場合は、次の事項について書面又は電磁的方法により明示しなければなりません
①給付の内容 ②報酬の額 ③支払期日 ④公正取引委員会規則が定めるその他の事項 |
ニューノーマル時代の労務管理のポイントの他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方