仕事によるストレスが関係した精神障害についての労災請求件数は、年々、増加傾向にあり、令和元年以降は、2000件を超えています。近年の社会情勢の変化や労災請求件数の大幅な増加を踏まえ、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討が行われ、令和5年7月に報告書が取りまとめられました。この報告書を受け、厚生労働省は、精神障害の労災請求の審査をより迅速かつ適切に行うことを目的として、令和5年9月1日付通達により「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正しました。

1 精神障害の労災認定要件

精神障害は、仕事のよるストレスや私生活でのストレスと、そのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られます。

出典:厚生労働省「精神障害の労災認定」

労災と認定するためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

 

②の業務による強い心理的負荷が認められるかどうかは、労働基準監督署の調査に基づき把握した業務による出来事を、「心理的負荷による精神障害の認定基準」の別表1.「業務による心理的負荷評価表」の「具体的出来事」に当てはめ、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の3段階に区分して評価し、判断されます。