2013/02/26
防災・危機管理ニュース
インターリスク総研が国内上場企業にBCM導入調査を実施
東日本大震災やタイの洪水などの大規模自然災害の発生や2012年5月のISO22301(事業継続マネジメントシステム)の発行を受け、企業のBCMへの関心が高まっている。
株式会社インターリスク総研が昨年2012年11月から12月にかけて国内の全上場企業3205社を対象に実施したBCM(事業継続マネジメントシステム)の導入実態調査では、BCPの策定率の上昇のほか、訓練を実施している企業数に大幅な増加が見られた。
■BCP訓練も普及
「策定している」「現在策定中である」「策定する計画がある」と回答した企業は、合計で80.8%となり、前回の調査と比較して12.4%増加(図1)。「策定していない」と回答した企業の割合は、前回調査比で、12.6%減少している。また、BCPに関する訓練を実施している企業は50%以上にのぼり、多くの企業が、BCP構築段階から訓練・検証フェーズに移行しつつあることが伺える(図2)。
回 答 |
今回調査 |
前回調査 |
増 減 |
策定している |
44.7% |
30.3% |
+14.4 |
現在策定中である |
24.8% |
23.1% |
+ 1.7 |
策定する計画がある |
11.3% |
15.0% |
- 3.7 |
策定していない |
18.7% |
31.3% |
-12.6 |
無回答 |
0.5% |
0.2% |
+ 0.3 |
(図1) BCPの策定状況
回 答 |
今回調査 |
前回調査 |
増 減 |
実施している |
52.1% |
32.0% |
+20.1 |
実施していない |
43.1% |
61.1% |
-18.0 |
その他・無回答 |
4.8% |
6.9% |
- 2.1 |
(図2) BCPの実行性に関する検証-BCPに関する訓練の実施状況
一方、現状、取引先にBCP作成を要請している企業はまだ多くないが、取引先がBCPを持つべきと考えている企業は90%を超え、今後は事業継続の取り組みを取引先まで拡大する企業が増加することが見込まれる(図3)。
【取引先がBCPを持つことについて】
必要と考える |
90.5% |
必要と考えない |
4.5% |
無回答 |
5.0% |
【取引先へのBCP作成要請】
要請している |
11.7% |
要請していない |
83.5% |
無回答 |
4.7% |
(図3) 取引先の事業継続の取り組みについて
■震災以降、取組を強化
こうした積極的な取組の増加の背景には、近年の東日本大震災やタイ洪水などが事業継続の取り組みに与えた影響が大きい。事業継続の取り組みが加速したほか、事業継続を実現する上で鍵となる経営層の理解が前回の調査と比較して8.9%増加するなど、経営戦略の一貫として、事業継続の取り組みが推進されている(図4)。
回 答 |
今回調査 |
前回調査 |
増 減 |
事業継続への取組みが加速した |
44.2% |
42.6% |
+1.6 |
経営層の理解が深まった |
50.8% |
41.9% |
+8.9 |
特に変化はない |
24.2% |
28.2% |
-4.0 |
事業継続に関する予算が増加した |
8.6% |
5.3% |
+3.3 |
その他・無回答 |
3.2% |
3.2% |
0 |
(図4) ①事業継続への取り組みに及ぼした影響
具体的に強化した取り組みについては「安否確認の仕組み構築」「帰宅指示・帰宅困難者への対応」「従業員の意識向上」などが挙げられる(図5)。
安否確認の仕組み構築 |
63.4% |
帰宅指示・帰宅困難者への対応 |
57.3% |
従業員の意識向上 |
42.9% |
コミュニケーション手段の複数化 |
39.5% |
被害想定の見直し |
39.3% |
建物・設備の耐震強化 |
33.2% |
BCPの訓練 |
27.8% |
事業継続体制面の強化 |
25.7% |
(図5) ②東日本大震災以降、取り組みを強化した事項
■今後の課題
東日本大震災やタイの洪水を受け、今後の課題については「事業継続性を持続的に向上させるための仕組みづくり」を筆頭に「BCP作成の全社展開」「BCMの有効性評価手法の確立」などを改善が必要な取り組みとして認識している。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方