2023/10/18
防災・危機管理ニュース
危機管理をテーマにした国内最大級の総合見本市「危機管理産業展2023」は10月11日~13日、東京ビッグサイトで開催。「防災・減災」「BCP・事業リスク対策」「セキュリティ」などの分野から約230社が出展し、3日間で約1万5000人が来場した。今回は関東大震災100年の節目。展示のなかから、防災と都市の課題の双方にアプローチする商品・サービスをピックアップして紹介する。
[防災・BCP×環境]
2m四方に設置できるタフで静かな風力発電
災害時の非常用電源として人口密集地に

風力発電開発スタートアップのチャレナジー(東京都墨田区、清水敦史CEO)は、風向きに依存しない垂直軸風車の小型風力発電機を展示した。全方位からの風に対応し、ゆっくり静かに発電するのが特色。災害時の非常用電源として学校や公園、避難施設などへの設置を呼びかける。
同社は2014年、安全・安心な電力を世界の隅々に届けることを目的に設立。風向きへの追従性と強風への耐久性を高めるとともに騒音やバードストライクの発生を抑えた「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発し、フィリピンや沖縄の島しょ部に設置してきている。
化石燃料を使わない独立電源は、環境負荷の低減や防災・BCPの観点からもニーズが高い。特に最近は都市で豪雨災害が頻発していることから、同社は限られたスペースに設置できる小型の風力発電機も開発、自治体や企業への訴求を強めている。今年2月には第1弾として「Type D(タイプディー)」と呼ぶモデルの販売を開始した。
定格出力100ワットの垂直軸風車と200ワットの太陽光発電パネルを搭載したモデルは、設置スペース2.1メートル四方、騒音レベル49デシベル。秒速3~14.5メートルの風で発電し、それ以上は回転を止めて風を受け流す。コンパクト化を図るとともに風切り音の発生と台風時の破損リスクを抑え、人口密集地への設置を可能にした。
「住宅街の真ん中に設置し、平時は夜間照明として使いながら、非常時にはスマートフォン80台分をフル充電できるくらいの電気をつくれる」と、同社経営企画の赤土侑也氏。同社はこのほかにも、置き基礎によって移動ができる可動式のモデルや、風車に氷が付着しにくい寒冷地用のモデルも開発している。
[防災・BCP×ライフスタイル]
自転車からも充電できるポータブル蓄電池
日常生活とエコ・防災活動をつなげる

商品・イベント企画のイグフィコーポレーション(東京都渋谷区、岡田直子社長)は、ソーラーパネルや自転車から充電できるポータブル蓄電池「チャージマン」を、販売代理店のサポートマーケティングサービス(埼玉県春日部市、荒川真一社長)のブースに展示した。
直径74ミリ×高さ135ミリの円筒形の蓄電池で、350ミリペットボトルとほぼ同じサイズ。携帯・保管に便利で、平時はもちろん停電時や避難時、アウトドアなど活用シーンは広い。
バッテリー容量は1万400ミリアンペアアワーで、おおむねスマートフォン3台分。USBポートは出力用2口、入力用1口を搭載し、内臓のLEDライトはフル充電で240時間連続点灯、夜間照明のほか点滅機能によりSOSモールス信号も発信する。コンセント、ソーラーパネル、自転車の3種類から充電が可能だ。
フル充電までの時間は、コンセントからは約7時間、折り畳み式ソーラーパネル(別売り)からは最短約7時間。自転車とはジェネレーター(別売り)を介してつなぎ、時速15キロ走行の場合、約10時間でフル充電する。企業などは25個入りのケースで購入し、フル充電状態で備蓄しておけば、複数人に貸し出すこともできる。
ソーラーパネルや自転車からの充電は、ライフスタイルの提案にもつながる。特に、人間の運動エネルギーを電気で貯める技術は同社の独自開発。通勤・通学や買い物、サイクリングなどの日常生活をエコ活動や防災活動に結び付けられるとして、広く普及を図りたい意向だ。
「子どもの自転車につなげば、遊びながら電気をつくれる。そして災害ともなれば、自分で電気をつくる術を持っていることは大きい。家族や周囲に対し『僕が電気をつくってあげるね』と。そうした生きる力の醸成にもつながる」と、同社営業販売室室長の篁直樹氏は話す。
[防災・BCP×観光レジャー]
シーンの変化に柔軟に追従するマルチ機能ワゴン
内部の可変性を高め自在に用途展開

キャンピングカー製造販売のトイファクトリー(岐阜県可児市、藤井昭文社長)は、10人乗りワゴン車のシートや内装を自在に変更して多目的に活用する「MARU MOBI(マルモビ)」を展示した。内部の可変性を高めることで使い道を拡大。平時・有事の分け隔てなく使えるフェーズフリーの車両として自治体や企業に提案する。
ベースとなるのはトヨタの「ハイエースワゴン グランドキャビン」。シートをはじめパーテーション、テーブル、キャビネット、ポータブルベッドなどの家具類を脱着式とし、用途に応じて柔軟に取り付け・取り外しする。モードチェンジにより、1台の車を多種多様なシーンで使うことが可能だ。
例えば、普段は公用車・社用車やコミュニティバスとして使い、イベント時はモードを変えて移動事務所や移動図書館、観光PR用受付所、期日前投票所に展開。災害時には緊急物資・人員輸送車をはじめ避難や物資の受付所、救護室・医務室、ペット避難所、授乳・おむつ換え室などに利用する。
「東日本大震災のとき、キャンピングカーが避難に役立ったという話をオーナーから複数聞いて、レジャーだけでなく災害時の生活を支えられることに気が付いた」と、経営推進本部室長兼マーケティングイノベーション部統括長の東川陽平氏。地元・可児市へ第1号車を納入したのを皮切りに、全国へ普及させていきたい意向だ。
自治体・企業がすでに所有している既存ワゴン車の改修も提案。「例えば観光地や温泉街では、ホテル・旅館が所有する送迎用ハイエースが遊休資産化しているケースが少なくない。それらを『マルモビ』に改修すれば、新たな機能が付加され、稼働率が上がる。観光振興にも寄与できる」と話す。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方