2013/08/22
防災・危機管理ニュース
RMFOCUS Vol.46より
株式会社インターリスク総研コンサルティング第一部 CSR・法務第二グループ
グループ長 上席コンサルタント 奥村 武司
アソシエイト 大豆生田 麻子
1.はじめに
近年、フェイスブック、ツイッター、ミクシィ、YouTubeといったソーシャルメディアの普及により、従来ではマスメディアでしかなしえなかったような広範囲の情報発信が、個人でも容易になっている。そもそもソーシャルメディアとは、オンライン上でユーザー同士が情報を交換(送受信)することから始まり、1対多」「「多対多」の双方向でテキスト・画像・動画等のデータを使ったコミュニケーションを可能とするものである。日本のソーシャルメディア人口は5,060万人、フェイスブックだけでも利用者数は1,380万人(※1)と推測されており、日本国内でも約10人に1人が利用していることになる。本稿をお読みの皆様の中にも、プライベートでアカウントを取得している方や、会社業務で公式アカウントの運営に携わっている方がおられるだろう。ソーシャルメディアが絡むトラブルが後を絶たない中、自ら積極的に情報発信などに活用するのであれ、もっぱら閲覧といった形で受け身に利用するのであれ、ソーシャルメディアの特性、企業に与える影響やリスクを認識し、適切に利用することがますます重要になっている。
2.リスク対策の必要性
個人にも企業にもソーシャルメディアがもたらすメリットは大きい。個人は、ソーシャルメディアを通じて様々な情報を入手・交換でき、同じ趣味や嗜好の友人知人とのつながりを構築できる。企業にとっては、広報戦略や販売促進を目的としたユーザーとのより近いコミュニケーションを可能とするツールであり、O2O(※2)マーケティングにはなくてはならないものとなっている。
一方、ソーシャルメディアの不適切な利用が、利用者個人にとどまらず、関係する企業にも大きな損失を与える場合があり、ソーシャルメディアを新たなリスク要因ととらえ、企業が管理していくことが必要となっている。
ソーシャルメディアの特徴として、その拡散性と迅速性があり、不用意に書き込んだ内容が瞬時に多くの人の目に触れることとなる。ほとんどのサービスでは、情報の公開範囲を設定できるが、自分とつながりのある「友達」等の設定によっては、意図するしないにかかわらず投稿内容への「いいね!」「引用」「返信」や、、「シェア」等により、その内容が広く拡散してしまう。また、投稿を知らせる機能も充実しており、たとえ投稿者本人がすぐに取り消したとしても情報は既に第三者に伝播されている場合も多い。このように従来のメディアとは違った特性、リスクを有するものがソーシャルメディアなのである。
では、企業はソーシャルメディアをリスクという観点でどのようにとらえているのだろうか。企業におけるソーシャルメディアのリスク意識調査では、「社員の個人アカウントから情報漏えいすること」について80.7%、「社員による顧客や他社に対する誹謗・中傷からトラブルが発生すること」について77.8%、「企業の公式アカウントから不適切な発言をしてトラブルが発生すること」について73.3%の企業がリスクを認識していると回答している。その他の項目についても半数以上がリスクを認識しており、ソーシャルメディアが企業にとって留意すべきリスクとしてとらえられているといえるだろう(表1)。
- keyword
- ITセキュリティ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
新型コロナでBCPはどう変わる!
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」最終回は、新型コロナにおけるBCPの発動について。
2022/05/25
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2022/05/24
-
従業員へ取り組みを浸透させる!
「事業継続及び防災の取組に関する実態調査を読み解く」第5回は、リスクへの対応を実施していく上での課題について。
2022/05/24
-
対象とする災害を増やせばBCPは機能するのか?
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第4回は、対象とする災害について。
2022/05/22
-
トレンドだけの「後追い」リスク想定になってないか?
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第3回は、重視するリスクについて
2022/05/22
-
-
被災時に役立ったのはBCPではなく安全確保や備蓄
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第2回は、被害を受けた際に有効であった取り組みについて
2022/05/19
-
最後に駆け込める場所をまちの至るところに
建築・不動産の小野田産業は地震や津波、洪水、噴火などの自然災害から命を守る防災シェルターを開発、普及に向けて取り組んでいます。軽くて水に浮くという特色から、特に津波避難用での引き合いが増加中。噴火用途についても、今夏には噴石に対する要求基準をクリアする考えです。小野田良作社長に開発の経緯と思いを聞きました。
2022/05/18
-
新しいISO規格:ISO31030:2021(トラベルリスクマネジメント)解説セミナー
国際標準化機構(ISO)は2021年9月、組織向けの渡航リスク管理の指針となる「ISO31030:2021トラベルリスクマネジメント」を発行しました。企業がどのようにして渡航リスク管理をおこなったらよいか、そのポイントがまとめられています。同規格の作成にあたって医療・セキュリティの面から専門的な知識を提供したインターナショナルSOS社の専門家を講師に招き、ISO31030:2021に具体的に何が書かれているのか、また組織はどのようなポイントに留意して渡航リスク管理対策を講じていく必要があるのかなど、具体例も交えながら解説していただきました。2022年5月17日開催
2022/05/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方