少子高齢化が深刻化する中で、多様な人材の労働参加が進み、働くことに対する価値観やライフスタイルも多様化しており、労働者が個々の事情や価値観に応じて持てる能力を最大限に発揮できるよう、多様な働き方を効果的に支えることが求められています。かかる状況を踏まえ、厚生労働省は、令和6年1月12日に「雇用保険法の一部を改正する法律案要綱」と「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(雇用保険法等の一部改正関係)要綱」の2つの改正法案要綱を労働政策審議会に諮問し、2月9日に「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が第213回国会に提出されました。雇用保険制度は、労働者が失業した場合や子を養育するために休業した場合に、失業等給付や育児休業給付を支給するほか、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図るための事業を行うもので、雇用に関する総合的機能を有する制度であると言えます。今回は雇用保険法の改正案について解説します。

改正案による主な改正事項としては、雇用保険制度の適用拡大、教育訓練・リスキリング支援のほか、育児期における多様な働き方支援として出生後休業支援給付、育児時短就業給付の創設などがあげられます。

(1)雇用保険の適用拡大(令和10年10月施行予定)

現行法では、① 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であり、② 31 日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険が適用されます。

改正案では、労働者の働き方や生計維持の在り方の多様化が進んでいることを踏まえ、多様な働き方を支えるセーフティネットを拡大するため、雇用保険の適用対象を週所定労働時間10時間以上の労働者まで拡大されます。

(2)教育訓練・リスキリング支援

①教育訓練給付の給付率の拡充(令和6年10月施行予定)

雇用保険制度では、労働者の主体的な能力開発を支援するため、雇用保険被保険者又は離職後1年以内の者が厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合、その費用の一部を教育訓練給付金として支給しています。

改正案では、労働者の主体的なリスキリング等への支援を強化、推進するとともに、教育訓練の効果(賃金上昇や再就職等)を高めることを目的として、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合には、現行の追加給付(20%)に加えて、更に受講費用の10%を追加で支給することとしています。

②教育訓練休暇給付の創設(令和7年10月施行予定)

労働者が生活費等への不安なく教育訓練に専念できるようにするため、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるために休暇を取得した場合に賃金の一定割合を支給する、教育訓練休暇給付が創設されます。

③新たな融資制度の創設(令和7年度中施行予定)

雇用保険の被保険者でない方については、教育訓練費用や生活費を対象とする新たな融資制度が創設されます。

④自己都合離職者の給付制限の見直し(令和7年4月1日施行予定)

正当な理由のない自己都合退職者については、失業給付の受給に、原則2ヶ月間の給付制限期間が設けられています。

改正案では、転職を試みる労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、給付制限期間が1カ月に短縮されます。また、離職期間中や離職日前1年以内に、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練や公共職業訓練等を受ける受給資格者については、給付制限が解除されます。