輪島市、3月、能登半島地震の住宅被害(本紙撮影)

はじめに

5月23日、珠洲市、輪島市、能登町は、災害関連死30人を初めて認定した。これで、直接死を含めて認定された死者だけで260人になる。能登半島地震の珠洲市、輪島市、能登町、穴水町の奥能登4市町の強震動地域は6万人強の人口。これは、223人が亡くなった熊本地震の強震動地域の6分の1にあたる。いかに過酷な地震被害であることだろうか。

関連死に認定された30人のうち、遺族の同意が得られたとして年代が公表された22人はいずれも60代以上で、60代が2人、70代が5人、80代が7人、90代以上が8人。また、21人については認定の理由が公表されている。読者のみなさんには、簡単に取りまとめをしたものではなく、できるだけ生に近いデータを読んでいただきたく、ここに掲載する。

●能登半島地震の災害関連死の経緯・認定理由

関連死を防ぐために―住宅耐震化の現状-

関連死は、単に避難生活の過酷さで高齢者が命を落とすという現象面に着目するだけでは防げない。それは、住宅の損壊、避難所等への移動、衛生環境の悪化、排せつ困難、必要な水分や栄養の不足、医療・福祉機能の損壊、コミュニティー支援の不足、などの総合的なシステムが壊れたために発生するからだ。

私が特に重要だと考えるのは、住宅の耐震化である。総務省が2018年に行った「住宅・土地統計調査」によると、1981年以前の耐震基準で建てられた住宅の割合は珠洲市で67%、能登町で66%、輪島市で60%だった。全国平均が29%だから、奥能登地方は古い耐震基準で建てられた住宅が多かった。耐震性不足は直接死の最大原因だが、多くの関連死も生み出す。

住宅耐震化は公助で

現在の自治体の耐震化支援制度は、持ち家で自己負担のできる人への支援が中心だ。模式図的に示すと、下表のようになる。

●自治体の耐震化支援制度の模式図(鍵屋作成)

国土交通省「住宅の耐震化に関するアンケート調査」(2018年10月~11月調査)では、耐震化に関する課題として「費用負担が大きいから」「古い家にお金をかけたくないから」といった費用に関する課題が圧倒的に多く、3位の「耐震化しても大地震による被害を避けられないと思うから」を大幅に上回っている。耐震化が進まない理由は、要は「お金」だ。

年金暮らしの高齢者に耐震化を求めるのは現実的なのか(イメージ:写真AC)

現状、自己負担のできる一定の所得のある人には公的支援がある。一方、低所得で自己負担のできない人や賃貸の人へは具体的な支援がない。果たして、これは公正だろうか。また、年金暮らしの高齢者に耐震化を求めるのは現実的だろうか。今の制度のままでは耐震化は進まず、大地震で同じような被害が出ることは確実だ。そして多くの関連死も生み出す。

耐震化の基準は国が当時の科学的水準で定めている。地震災害が起きるたびに改正され、2000年6月の耐震基準を満たした建物は熊本地震でもほとんど被害が出ていない。つまり現在の基準で住宅を耐震化すれば人命を守れる可能性が格段に上がる。

ほかにも、住宅耐震化は、経済的な費用隊効果があることが示されている。2009年4月の「東南海・南海地震の地震防災戦略のフォローアップ結果」(※)だ。 

耐震化は、大地震を前提とすれば、経費に比べ圧倒的に経済効果が高い(イメージ:写真AC)

これによれば、3年間の取り組みにより、想定死者数が約4000人減少、経済被害が11兆円減少している。このうち死者の半数、経済被害の7割が、住宅等の耐震化の効果だ(残りの効果は津波対策による)。耐震化は、大地震を前提とすれば、経費に比べて圧倒的に経済効果が高い。これこそ、「公助」で取り組むことの価値だ。

私は、全額公費で強制的にでも耐震化を進めた方がよいと確信している。実際に取り組んでいるのが高知県黒潮町だ。町は30万円の設計費、125万円までの改修工事費は全額助成し、1万人の人口で年間に156件の耐震化補助を実現している。みなさんの自治体の取り組みと、ぜひ比較していただきたいと思う。

※東南海・南海地震の地震防災戦略フォローアップ結果(内閣府、2009年)
https://www.bousai.go.jp/jishin/tonankai_nankai/pdf/followup.pdf