2024/08/16
防災・危機管理ニュース
初となる南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」の発表から1週間が経過し、後発地震に備えた呼び掛けは終了した。専門家はこれまでの周知が不十分だったとした上で、自治体などに次の発表に備えた対応の検討を求めた。
京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)は臨時情報について、「避難所を開設するかどうかや、海水浴を中止にするかどうかなど、対応を取るべきか否かの判断がしにくい情報だ」と指摘。「対応に難しさがあるにもかかわらず、発表されるまで多くの人が(臨時情報の)名前すら知らなかった」と周知不足を問題視した。
その上で、「巨大地震に気を付けつつ、日常生活を可能な限り維持するというバランスをどう取るかは地域によって変わる。自治体などは、次に発表される時までに、念入りな計画を立て、訓練し直す必要がある」と訴えた。
臨時情報の発表後、気象庁は記者会見を開いたり、観測された地震の回数を公表したりするなどして連日注意を呼び掛けた。
関西大の林能成教授(地震防災・地震学)は「気象庁は役割を果たしたと思うが、制度づくりを主導した内閣府の存在感がなかった」と指摘。「観測結果を評価する気象庁と防災対応を呼び掛ける内閣府の役割は違う。内閣府の準備は明らかに不足していた」と批判した。
今回の臨時情報は日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が引き金となったが、林教授は「もし大阪などの都市部に近い紀伊半島などが震源となった場合、社会の混乱はより大きくなる可能性がある」と強調。「別のシナリオも考慮し、次に備えて自治体や個人がそれぞれどう動くかを考え続ける必要がある」と述べた。
〔写真説明〕南海トラフ巨大地震への注意呼び掛け終了について、内閣府と気象庁が開いた合同記者会見=15日、東京都港区
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- 南海トラフ地震臨時情報
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方