2024/09/19
防災・危機管理ニュース
【イスタンブール時事】レバノン各地で起きたポケットベル型通信機器の連続爆発を巡り、臆測が広がっている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、イスラエルが敵対するイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らを狙った可能性を指摘。数十グラム程度の爆薬と起爆装置が端末に仕込まれ、ヒズボラ指導部からを装うメッセージを受信すると起爆する仕組みだったと報じた。
レバノンやイラクなどの政府は、イスラエルによる「サイバー攻撃」だと非難したが、イスラエルは公式に関与を認めておらず、真相は不明だ。ヒズボラは「専門機関が原因究明に向け調査を実施する」としている。
米ネットメディア「アクシオス」によると、イスラエル側はヒズボラとの全面衝突の際に機先を制して打撃を与えるため、戦闘員らの通信機器の爆破を計画。しかし、ヒズボラ側で機器を不審に思う動きが浮上したため、計画察知を恐れて爆破を急いだと報じた。
機器に内蔵されたバッテリーがハッキングで異常高温になり、爆発したとの見方も伝えられたが、SNSなどには、通信機器が特に目立った前触れもなくさく裂したように見える動画も、多数投稿された。米CNNテレビによれば、元米情報機関当局者は「遠隔のハッキングで機器に過剰な負荷をかけバッテリーを爆発させたにしては、規模が大きすぎる」と指摘する。
一方、英BBC放送(同)は元英陸軍専門家の話として、通信機器が製造・供給される過程で、電子部品の一部として高性能爆薬が端末内部に混入された可能性があると伝えた。
ヒズボラはイスラエルによる通信傍受や要人暗殺を避けるため、数年前から戦闘員らが携帯電話やインターネットを利用するのを制限してきたとされる。ロイター通信は今回爆発した機器について、台湾企業が製造し、ヒズボラが過去数カ月に調達した最新式のものだと報じた。
イスラエルは7月にイランで、イスラム組織ハマス最高指導者だったハニヤ氏の暗殺に関与したとされる。イラン側は否定するものの、米メディアは同氏が宿泊する施設へ数カ月前に爆発物が持ち込まれ、イラン国内の協力者らを使った周到な準備を経て殺害されたと報じた。綿密で大胆な手口という点で今回の爆発も酷似しており、中東の安全保障専門家は、衛星テレビ局アルジャジーラに「ヒズボラへの心理的影響は甚大だ」と話している。
〔写真説明〕レバノンで相次いだ通信機器の爆発後、病院へ運ばれる人=17日、ベイルート(ロイター時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方