2024/10/24
防災・危機管理ニュース
1月に発生した能登半島地震。復旧・復興のさなか、9月には大雨が襲い、被災地は甚大な被害を受けた。能登での反省を踏まえ、防災対策強化の必要性では与野党が一致。各党は「防災庁」創設や首都機能分散、避難所環境の改善などを公約に掲げた。
◇「防災庁」問われる実効性
「防災省」創設が持論の石破茂首相。自民党は当面の目標として、「防災庁」の設置を公約に掲げる。現在の内閣府防災部門の司令塔機能を強化し、人員や予算の大幅な拡充を目指すとし、公明党も同調。社民党なども防災省設置を公約に盛り込んだ。
防災専門の新組織を巡っては「屋上屋を架すことになる」との慎重意見もあり、何度も立ち消えになってきた。省庁間の役割分担や人員、予算の確保策といった課題がある中、実効性が問われるが、選挙戦では論戦に至っていない。
一方、事前防災の取り組みの柱となっている国土強靱(きょうじん)化もテーマだ。2011年の東日本大震災発生を受け、政府は事前防災を重視。大規模災害から迅速に復興できるよう、公共インフラの老朽化対策などを進めてきた。
岸田前政権下では、事業規模を15兆円程度と定めた「5カ年加速化対策」(21~25年度)を展開している。自民は次期計画を「早急に策定する」と公約に明記。公明は、次期計画では5年間で20兆円規模を確保するよう政府に求めるなど、さらに踏み込んだ。
立憲民主党は、首都直下地震に備え、首都機能分散を主張。建物の耐震化に加え、老朽化が深刻なインフラの長寿命化に取り組むとした。国民民主党も公共インフラの円滑な維持管理などを掲げる。日本維新の会は、西日本の大規模災害に対応できる「大阪消防庁」を設け、迅速な対応が可能な体制整備を提唱する。
災害後の対応策では自民や公明、共産党が避難所の環境改善を主張。災害関連死ゼロを実現するため、トイレ、キッチン、ベッドなどの生活必需品の速やかな配備を唱える。
◇国民を巻き込んだ議論を
各党が防災対策を重視する点では同じだが、国民の行動を促す公約は乏しい。名古屋大の福和伸夫名誉教授(地震工学)は「人口減少と高齢化で、災害発生時の支援者は減り要支援者が増える。被害を抑えるには国民を巻き込んだ議論が必須だ」と指摘。大規模災害を見据え、国としての取り組み強化だけでなく、国民に事前の備えを促す政策も求められる。
〔写真説明〕元日の能登半島地震と9月の豪雨災害の爪痕が残る大谷地区=11日、石川県珠洲市
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方