2025/02/01
防災・危機管理ニュース
【ワシントン時事】トランプ米政権は1日、カナダ、メキシコからの輸入品に25%、中国に10%の関税を課す。米国の二大貿易相手国であるカナダ、メキシコでは、日本メーカーも含めた自動車業界などがサプライチェーン(供給網)の統合を進めており、各国の企業活動や経済への打撃は必至だ。3番目の貿易相手、中国との「貿易戦争」再燃も懸念されている。
トランプ大統領は「短期的な混乱はあるが、関税はわれわれを豊かにする」と意に介さず、欧州連合(EU)にも「関税に関する重大な対応」を取る意向。2月中旬以降、原油や天然ガス、半導体、鉄鋼など幅広い品目で輸入品への関税賦課も検討している。
トランプ氏は、不法移民や合成麻薬「フェンタニル」の米国流入が続いていることに3カ国が責任を負っていると主張。「米国をひどい扱いにしている」と非難してきた。また、巨額の貿易赤字の是正も求めている。
米国では、トランプ第1次政権下の2020年7月に発効した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を受け、両国との経済統合が進んだ。中国との貿易が輸入に偏るのに対し、カナダ、メキシコとは輸出入ともに多く、米国の全貿易量の約3割を両国が占める。報復関税が発動されれば、米企業の輸出にも大打撃となりかねない。
特に影響が大きいのが自動車業界だ。メキシコに生産拠点や部品供給元を持つメーカーも多い。「1台の車を製造するのに、部品が何度も国境を行き来する」(日本企業関係者)とされ、国境に「関税の壁」(トランプ氏)が出現すれば、米企業はコスト高に直面する可能性が高い。
メキシコからは、トマトやアボカドなどの生鮮食品も多く輸入している。関税の消費者価格への転嫁は避けられず、食品価格の値上がりにつながるとの見方が多い。メキシコの輸出業者だけでなく、米国民の食卓にも影響は及ぶ。
エネルギーへの影響も懸念されている。米国は原油輸入の約6割をカナダ、約1割をメキシコに頼る。業界団体の米燃料石油化学製造者協会(AFPM)は、関税は「消費者や製造業のコストを上昇させ、米国のエネルギー安全保障を脅かす」(広報担当者)と指摘している。
〔写真説明〕トランプ米大統領=1月29日、ワシントン(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方