2025/02/19
阪神・淡路大震災30年の光と影
阪神・淡路大震災30年

阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
「うちの家、燃やさんとってくれ」

その日は公休で、起きたら家族と車でスキーに行く予定でした。
ゴォーっという低いごう音が聞こえ、何かと思ったら、ガタガタガタガタガタ、グァッサー、グァッサー、グァッサーと揺れました。枕元の、家内が嫁入りで持ってきた三面鏡がトランポリンに乗せたように飛び跳ねていました。当時はアパートに住んでいて、家内と子供と川の字で寝ていました。
大きな地震だと思った瞬間、タンスが倒れ、迫ってきました。とっさに2人に覆い被さり、覚悟しました。偶然、観音開きになったタンスの扉がつっかえ棒になり、助かった。すごくラッキーでした。運が悪ければ、私はここにいません。
避難のために台所に行くと、棚は全て倒れ、食器は割れて散らばっていました。冷蔵庫が台所の中央にまで動くほどの揺れでした。枕元の服を着て、停電していると考えブレーカーを全て落とし、駐車場に止めていた車へ移動しました。
部屋を出ると、道路の向こう側で火柱が上がっている。家内と子供を車の中で待たせ、まずは同じアパートの住人の救助に動きました。「大丈夫ですか」「大丈夫ですか」と声をかけて周りました。幸いにも皆さん無事でした。その後、近所の公衆電話から119番にかけても通じず、火災をなんとかする必要がありました。
国道の向こう側で発生していた火災は、周辺一帯に延焼する可能性がありました。偶然、近所の消防団の詰め所から消防車が来てくれました。顔見知りで「手伝います」と伝えました。ラッキーだったのは、隣の川で水が流れてたこと。ただし、川から水をくみ上げようにも、当時の消防団のポンプ自動車は性能が高くなく、そのままでは道の高さまで水をくみ上げられませんでした。
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