2015/04/10
防災・危機管理ニュース
首都直下地震の注意点などを記載
在日フランス商工会議所は2015年3月、事業継続マネジメント委員会(ピエール・スヴェストル委員長)を設立し、このほど会員企業(主にフランスの中小企業)向けに、日本国内で発生が危惧されている大規模地震に対して各企業が事業継続をしていくための「BCPマニュアル」のたたき台を発行した。委員長のピエール・スヴェストル氏は、「この事業継続計画書を多くの企業と共有することで、さらに内容を充実させていきたい」としており、同所では、有志企業からのアイデア・意見交換を通して同計画書をさらに実用に近いものに仕上げていく方針。5月13日には同委員会のセミナーが行われる予定。同商工会議所の担当者によると、セミナーでは、在日フランス企業のBCPの取り組みなどについて発表が行われる予定。すべて英語だが、フランス企業のBCPなどに興味があれば会員以外の参加も受け入れることを検討したいとしている(事前確認が必要:在日フランス商工会議所イベント担当 Tel.03-3288-9624)。
ピエール・スヴェストル氏は40年近く日本と関わりがあり、BCP(事業継続計画)についての経験も豊か。阪神大震災や地下鉄サリン事件の際には、日本経済における影響を予測した。2001年からは日産自動車に、内部監査およびリスク管理の責任者として従事。同社にて複数の地震対応に携わった。
同商工会議所のホームページに記載された内容によると、ピエール氏は2007年の新潟中越地震で日本の自動車部品サプライヤーが生産機能の大部分を失ったことについて「当時、自動車の関連会社は、自動車メーカーが関連会社の工場の再建のために自社の従業員を派遣するほど、大きな被害を受けた」と振り返っている。また2011年の東日本大震災についても「サプライヤーの被害が大きかったために、復興は遅れ、困難であった」と語っている。
同氏は現在、日本国内で独立したコンサルタントとして活動しているが、「大企業で継続計画を実施するのは非常に困難な作業」と指摘。理由として、「経営陣がリスクを認知し、予測する必要性を感じているのにもかかわらず、ノウハウが足りない。ワーキンググループは優先順位を決められずにいる。さらに、大規模地震から時間が経つにつれ緊急性は薄れるといった問題点が挙げられる」としている。
事業継続マニュアルは、Chapter1「会社のBCP」、Chapter2「地震発生時のための従業員の教育」、Chapter3「従業員の地震防災マニュアルとチェックリスト」、Chapter4「企業の地震防災チェックリスト」、Chapter5「支店や営業店の防災チェックリスト」、Chapter6「海外の親会社の防災マニュアル」の6章で構成されている。
このうちChapter1では、地震や津波の被災想定について、特に中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが平成25年12月に発表した被災想定を大きく紹介。その上で、まず、すべての会社が従業員の安全を守り、危機に対する指揮調整とコミュニケーションを強化すること、ITバックアップと復旧の体制を整えることが大切と指摘した。
地震時の行動としては、外に飛び出さないことや身を低くして頭を保護すること、揺れの後に避難する場所などを確保することなどを記載。また、帰宅困難者対策にも言及し、家族と速やかに安否確認が取り合える体制を整えておくことや、迅速に海外本社に連絡すること、会社が従業員の3日分程度の水や食料を備蓄しておく必要性などにも触れている。一度従業員が帰宅したら、交通機関が復旧するまで出社が難しくなることから、在宅での勤務についても整えた方がいいと助言。
バックアップ体制についてはITに加え代替オフィスについても必要性を指摘している。
BCPについては、事業重要度分析(BIA: Business Impact Analysis)の実施や、最大許容停止時間(MTPD)・目標復旧時間(RTO)の設定、長期間的なレジリエンス(復旧)の模索などの概要などを紹介している。
Chapter2以降では、耐震や家具類の転倒防止、備蓄、災害時の行動などについて、具体的なチェックリストを用いて紹介している。
在日フランス商工会議所の担当者は「今回発表したマニュアルは、まだたたき台段階ではあるが、広く国内外の企業の意見を聞きまとめたもので、会員企業以外にも役立つ内容になっていると思う」と話している。現在、同会議所の会員は約500社で、そのうち7割がフランス企業、3割がフランスと何らかの関連がある日本企業だという。
在日フランス商工会議所のホームページから事業継続計画書をダウンロードできる(英語)⇒ http://www.ccifj.or.jp/jp/single-news/n/57094/bcp/
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