トランプ米大統領が、日本車への関税を15%に引き下げる大統領令に署名したことで、自動車業界からは「ひとまず安心した」(大手メーカー幹部)との声が出た。もっとも、トランプ政権発足前の2.5%に比べれば、依然高い水準。自動車各社が生産拠点を構え、部品や原材料調達をしているカナダ、メキシコとの貿易摩擦は収まっておらず、不透明感が残る。
 日米共同声明では、日本が追加の安全試験なしで米国製自動車の受け入れに取り組むと明記された。トヨタ自動車は、米国生産車の「逆輸入」に意欲をみせる。国内販売車種の充実だけでなく、米国が問題視する対米貿易黒字の削減へのアピールにもなりそうだ。
 トヨタなど大手6社は、米関税で年間計2兆6000億円超の打撃になると試算。多くの社が8月1日に自動車関税が現行の27.5%から15%に引き下げられると仮定して算出しており、遡及(そきゅう)して適用されなければ影響額が膨らむ恐れがある。日本からの輸出依存度が高いマツダは「適用が1カ月遅れると60億円の影響がある」(広報)と話す。
 また、各社は米国で生産するに当たり、カナダ、メキシコにまたがるサプライチェーン(供給網)を構築している。米国と両国間では貿易摩擦が続き、貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の見直し時期を来年に控え、先行きが見えないことも懸念材料だ。
 自動車各社は当面、米国での値上げやコスト削減のほか、収益性を踏まえた輸出車種の再検討などを進め、米関税による業績への悪影響を緩和する考えだ。 
〔写真説明〕7月23日、横浜の大黒埠頭(ふとう)で輸送を待つ新車(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)