【ニューヨーク時事】「トランプ関税」が米国で企業の経営を圧迫している。関税発動前に輸入した商品の在庫が払底し、「物価上昇圧力はモノ全体」(米金融大手)に及ぶなど影響が顕在化。食品や小売りなど幅広い業種でコスト増の懸念が広がる中、企業と消費者は試練を迎えている。
 日本など約120カ国で缶入りスープを販売するザ・キャンベルズ・カンパニーは、2026年7月通期(25年8月~26年7月)の利益が前期比1割超減少すると予想。トランプ政権が今年6月、鉄鋼・アルミニウムの追加関税を2倍の50%に引き上げたことが響く。ビークハイゼン最高経営責任者(CEO)は「生産性向上とコスト削減」で乗り切るとしつつも、値上げも示唆した。
 人気ブランド「コーチ」などを展開するタペストリーは、今後1年間で関税の追加コストが1億6000万ドル(約240億円)と見込む。追加関税率が50%と、他国よりも高いインドなどから製品を調達していることが逆風となる。
 低価格路線が奏功し、節約志向を強める高所得者の取り込みに成功した小売り世界最大手ウォルマートは、価格を「できる限り低いまま、長く維持する」(マクミロンCEO)方針だ。ただ、「毎週コストが増え続けている」といい、こうした経営戦略がいずれ限界を迎える可能性がある。
 トランプ政権は値上げ動向に目を光らせる。政権からの非難を避けたいとの思惑から、ゲーム大手は価格を引き上げた際、「困難な経済環境」を理由に挙げた。市場では企業がコストを吸収しきれず「あいまいな説明による値上げ」(日系証券)が相次ぐとの見方もあり、物価上昇に対する懸念が高まっている。 
〔写真説明〕米マイアミ港で貨物船に積み上げられたコンテナ=8月7日、フロリダ州マイアミ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)