自民党総裁選が22日告示され、5人が立候補を届け出た。物価高やコメ問題など喫緊の課題が山積みの日本社会。「明るい未来が見えるような政策を」。国民からは早急な対策を求める切実な声が上がった。
 シングルマザーらの交流を支える一般社団法人ひとり親支援協会(大阪市)には、食費の増加などに関する相談が増えている。協会運営のサークル「エスクル」に所属し、10代の娘3人を育てる長崎県の会社員女性(50)は「娘らがまかない付きの仕事をするおかげで何とか生活できる。新総裁は自分の所得を国民に分配するくらいの覚悟を」と訴えた。
 町工場が多く集まる東京都大田区。半導体製造装置に使われる精密なねじを生産する伊和起ゲージの広瀬安宏社長(65)は「自民党の論理だけで決まった選挙だ」と冷ややかだ。物価高に伴い製品の原料価格は数年前の倍になった。「賃上げが公約の人もいるがそれを決めるのは企業。製品が海外に売れやすくなる政策を」と話した。
 食卓に不可欠なコメの問題も深刻だ。今月に入り、2025年産の新米が本格的に出回り始めたが、価格は再び高騰傾向にある。秋田県大仙市でコメ農家を営む田村誠市さん(68)は「生産費も上がっている。将来の担い手育成などにより、農家が米作りを続けていけるよう、うまくかじ取りをしてほしい」と求めた。
 コメ農家の40代男性=北海道栗山町=は「国の政策に振り回される感は否めない」と不安げな様子。コメの増産転換も簡単ではないため、次の総裁には「ある程度明るい未来が見えるような政策を進めてほしい」と期待を込めた。
 昨年元日の能登半島地震と9月の豪雨で甚大な被害が出た石川県輪島市。地震で家が半壊し、入居した仮設住宅も豪雨で床上浸水の被害に遭った無職沖崎恵さん(85)は「仮設住宅は立地も良くない。仮設住宅ではないきちんとした公営住宅を早く完成させてほしい」と語った。
 地震で家が傾き、長年営んできたガラス施工販売店を閉めた無職男性(84)は「復興に向け若者が定着する取り組みを期待したい」と話す。地方創生については「地方に目を向け、自分たちの孫世代が安心して暮らせるような社会にしてほしい」と訴えた。 
〔写真説明〕自民党総裁選の所見発表演説会。中央はあいさつする総裁選挙管理委員会の逢沢一郎委員長=22日午後、東京・永田町の同党本部

(ニュース提供元:時事通信社)