【北京時事】中国共産党は23日まで開いた重要会議で、次期5カ年計画(2026~30年)の方向性を決めた。国営新華社通信が報じたコミュニケによると、科学技術の分野で海外に頼らない「自立自強」路線を加速させる。米国がハイテク産業の対中輸出規制を強める中、国内で技術開発を急ぐ構えだ。
 「米国の制裁はそれほど気にしていない」。ハイテク産業が集積する安徽省政府の幹部はこう自信を見せた。省都の合肥では近年、政府の後押しを背景に電気自動車(EV)や人工知能(AI)といった新興産業が急成長。かつて経済の停滞に悩んでいた省の成長率は近年、ほとんどの年で中国全体の平均を上回っている。
 「どんな厳しい状況でも発展する道はある」。先の幹部は語気を強めた。合肥で生産されたハイテク製品は海外へも出荷。中国に駐在する日系機械メーカー幹部は、中国のハイテク技術が「急速に伸びている」と話した。
 共産党が進めるのは、巨大な国土にサプライチェーン(供給網)を張り巡らし、地域ごとにそれぞれの得意分野を発展させることで、総合的な国力を高める戦略だ。中でも高付加価値製品は成長を続けるためのカギの一つ。合肥のほか、北京やアリババ集団が拠点を置く浙江省杭州などで産業基盤が整いつつある。
 党は今後5年間について「(発展に向けた)不確実性が高まる時期だ」と強調した。貿易戦争で相対するトランプ米政権は29年まで続く見通しで、対立の長期化を念頭に置いている可能性がありそうだ。党関係者は自立自強について「生き残りのための防衛策だ」と話す。
 ただ、中国では「対米輸出がなくなり、売り上げがほぼ蒸発した」(浙江省のおもちゃ卸売り事業者)といった悲鳴も漏れる。在中日系商社関係者によると、米国とのデカップリング(分断)を背景に、工場を東南アジアへ移す日系企業も増えているという。 
〔写真説明〕中国江蘇省の半導体チップ工場=2024年4月29日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)