【バンコク時事】タイとカンボジアの国境地帯での両国軍の衝突は9日も続き、双方で死傷者が増加した。衝突は国境地帯の複数地点に広がり、多くの住民が避難を余儀なくされている。マレーシアが米国と共に仲介した和平合意の履行再開は一段と遠のいた。
 カンボジア国防省は9日の声明で、8日以降に民間人7人が死亡したと発表した。タイ軍が戦車や爆撃ドローンを投入し、毒性ガスを撃ち込んできたと説明。カンボジアのメディアは9日、同国北部、西部の4州で、住民5万4000人以上が家を追われたと報じた。
 一方、タイ陸軍は9日、この2日間で少なくとも3人が死亡したと明らかにした。国境付近のタイ東北部4県で12万人以上が避難したという。また、タイ空軍は9日、国境地帯にあるカンボジア軍陣地を8日に空爆したのは「報復」が目的で、軍事施設を標的にしたと述べた。
 マレーシアのアンワル首相は8日、自身のフェイスブックに「マレーシアは平穏な状況を回復し衝突の拡大を防ぐため、支援の用意がある」と投稿。仲介継続への意欲を示した。
 タイのアヌティン首相、カンボジアのフン・マネット首相は10月、アンワル氏とトランプ米大統領の立ち会いの下、国境紛争の終息に向けて和平合意を締結した。しかし、アヌティン氏は11月、国境地帯で自国の兵士が負傷したことを理由に合意の履行停止を宣言。その後は双方が相手側が攻撃を始めたと主張するなどし、戦闘停止の道筋が見えない状況だ。 
〔写真説明〕カンボジアとの国境紛争で避難を余儀なくされたタイの人々=9日、タイ東北部スリン県(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)