登壇したデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社フォレンジックサービス統括パートナー・中島 祐輔氏

企業のM&A支援やフォレンジックサービスを手掛けるデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社は、上場企業内で起こる不正の実態、予防策や発生対応の状況をアンケート調査した「企業の不正リスク調査白書」を発表。3日、東京都内で記者発表会を開いた。ポリシー制定や内部通報制度など制度導入する企業の割合は高まっているものの、実際の通報件数は極めて少なく、運用面に課題があることが明らかになった。

同レポートは、2006年から定期的に行っており今回で6回目。調査結果によると、過去3年間に不正事例が1件以上あったと回答した企業は46.5%にのぼった。

不正の種別では、1位が窃盗・不正支出など「横領」で66.7%(複数回答可)。2位が架空売上・費用隠ぺいなど「不正会計」で31.2%。3位「情報漏えい」23.4%、4位「データ偽装(品質、産地、信用情報等)」17.0%と続いた。5位から8位は「カルテル・談合」「贈収賄」「利益相反」「インサイダー取引」の順で、いずれも1割未満にとどまった。

不正防止策は総じて実施率が高く、8割を超えたのは「不正防止ポリシー制定」で93.7%、「内部通報制度の設置」97.4%、「内部監査の実施」87.5%、「内部統制報告制度(J-SOX)の活用」82.8%、「従業員に対する不正防止研修」80.7%と上位5項目が8割を超えた。

写真を拡大 「過去3年間で不正事例あり」は46.5%、発生が最も多かったのは「横領」で66.7%(出典:「企業の不正リスク調査白書」2018-2020)



一方、内部通報制度の通報件数は、全体で「0~5件」が54.8%と過半数を占め、年平均で15.6回と少なく、制度の実施率は高いが実際の運用が徹底されていない現状が明らかになった。

不正に対する危機意識については、2年前(2016年)と比べて不正リスクへの危機意識が高まったと回答した割合は69.6%。部門別の理解度を聞いたところ、「十分である」と回答したのは、内部監査部門が71.6%、法務・コンプライアンス部門が67.0%、経営者が61.7%と高いのに対し、営業・サービスは15.5%、製造9.6%、研究開発9.9%で低く、現場部門との温度差がある実態が明らかになった。

不正の情報発信について、不正発生時に公表の可否に影響を与える事項を複数回答可で聞いたところ、「顧問弁護士の助言」が70.3%と最も高い一方、「該当事項の専門分野に関する社外専門家の判断」は29.0%、「コンプライアンスに関する社外専門家の判断」は22.4%と低く、ブランド価値やレピュテーションなど社会的評価踏まえて公表の可否を適切に判断できる環境づくりには課題が残った。

調査を統括した同社シニアヴァイスプレジデントの後藤孝久氏は調査の結果をもとに、不正リスク対策に関する日本企業の課題として「運用の不徹底」「現場との温度差」「発信の消極性」の3点を挙げた。

記者発表会で有識者として登壇した青山学院大学名誉教授・八田進二氏は今回の調査結果を踏まえ「ビジネス環境がグローバル化する中で、日本企業も規則やルール作りだけでなく、運用面の実効性が問われている。企業の持続可能な成長戦略と一体で取り組んでほしい」と取り組みの進展を期待した。

有識者として登壇した青山学院大学・八田名誉教授

■リリースはこちら
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/frs/jp-fraud-survey-2018-2020.html

(了)

リスク対策.com :峰田 慎二