災害が、とりわけ大きな被害を与えるのは、もともと生活に困難を抱えている高齢者たちだ(写真:Adobe stock)

関連死が増える理由―弱い立場ほど被害を受けやすい―

災害は誰にでも起こる。しかし、大きな被害を受けるのは、高齢者や障がいのある人など、もともと生活に困難を抱えている人たちである。

日本では75歳以上の高齢者が、この30年間で約3倍の2200万人になった。75歳を過ぎると約3人に1人が介護や支援を必要としている。介護が必要な人の多くは長い距離を歩くことができず、階段の上り下りも難しい。そのため、地震や津波、大雨のときに「歩いて避難してください」と言われても、自分の力だけでは逃げることができない。

避難する際には、まず家族の助けが大切である。しかし、一人暮らしの高齢者は1995年の約220万人から、今では約760万人までに増えている。家族が近くにいない人が増えているのである。

画像を拡大 近所付き合いの程度の推移(出典:2007年版国民生活白書、2025年10月社会意識に関する世論調査)

また、近所の人とのつながりも弱くなっている。上の図を見ると、1997年には「近所の人と親しく付き合っている」と答えた人が4割以上いたが、2025年には1割にも届かなくなった。反対に、「あまり付き合っていない」「付き合っていない」という人は約半数になっている。

私は、これが今の日本社会の大きな課題だと考えている。昔は、近所の人にあいさつをしたり、困ったときに助け合ったりすることが自然に行われていた。しかし、そのような関係は少なくなった。普段から交流がなければ、災害のときにも「大丈夫ですか」と声をかけにくくなる。

アメリカの政治学者R.パットナムは、人とのつながりが弱い社会では、教育や健康、治安など多くの面で問題が起こりやすいことを実証的に示した。災害でも同じである。地域のつながりが弱いほど、人を助ける力も弱くなってしまう。

災害が起こると、高齢者や障がい者など支援が必要な人は一気に増える。しかし、その一方で自治体や医療、福祉、地域の人たちも被災するため、助ける力は小さくなる。この「助けを必要とする人が増える」のに「助ける人は減る」という状況が、災害関連死を増やす大きな原因である。

そのため、中長期的な対策としては、普段から地域の人同士が自然につながり、支え合える社会をつくることが大切である。