2019/01/21
安心、それが最大の敵だ

詩人の4期の発展
詩人ゲーテの人間的及び精神的発展は4期に大別することができる、とされる。
・第1期は出生からライプチヒ遊学(1765~68)と1770年のシュトラスブルク(現フランス領シュトラスブール)遊学中における哲学者ヘルダーとの出会いを経て75年秋のワイマール移住まで。
・第2期はワイマール公国のカール・アウグスト公のもとにおける多忙な政務及びシュタイン夫人との恋愛の10年間。
・第3期はイタリア旅行(1786~88)を過渡期として帰国から盟友・文学者シラーの死(1805)まで。
・第4期はそれ以後のエッカーマンの秘書時代を含む晩年である。
ドイツ文学史上、ゲーテが文学活動を開始した時期は既に記したように「シュツルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)」と呼ばれる。だが、シェークスピアを称揚した友人ヘルダーがその理論的指導者であったのに対し、ゲーテは抒情詩の面で「5月の歌」をはじめとする「ゼーゼンハイム小曲」、戯曲の面で「ゼッツ・フォン・ベルリヒンゲン」、小説の面で書簡体文学「若きウェルテルの悩み」によって真に文学革命的な新生面を開いた。
万能の才人
ゲーテの文学世界の特徴は、<自然><象徴><理念><活動><愛><悪魔的(デモーニッシュ)なもの>などという言葉によって要約される。彼にとって自然は青年時代から<神性の生きた衣>(『ファウスト』第1部)であり、森羅万象ことごとく<神性の内的生命>を象徴的に暗示するものであった。彼の詩作は、自然の中に神性の声を聞き取り、象徴として把握された事物の隠れた意味を探りだすことに他ならなかった。この意味で彼の文学作品は深く宗教的な意味を持っていた。そのうえ、神性が永遠の理念に従って神秘的生命の営みを続けているように、人間には<理念>としての芸術的・道徳的理想を<活動>によって実現すべき使命が与えられている。
しかも、その活動が個人及び社会に役立つためには<愛>を持っていなければならなかった。その必要は、自然や歴史の中の<デモーニッシュ>なもの、即ち完全に神的でも悪魔的でもない無気味な非合理的力の作用が絶えず感じられるだけに一層切実であった。ゲーテの抒情詩はこうした必然的に<象徴>的自然詩ないし体験詩となり、彼の小説や戯曲の作中人物たちもみな、詩人同様それぞれの仕方でデモーニッシュなものとの戦いを経験しなければならなかった。
- keyword
- ゲーテ
- ドイツ
- 安心、それが最大の敵だ
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方