2019/01/21
安心、それが最大の敵だ
膨大な美術研究・自然科学の論文
文学作品や自叙伝的著作の他、ゲーテには厖大な量の美術研究論文と自然科学論文がある。それらは翻訳ではごく一部しか知られていないが、思想家としてのゲーテを理解するためには本来最も重要なものである。とりわけ顎間骨(がっかんこつ)、植物の変態、動物の原型、色彩の根源現象などに関するゲーテの研究や思想は、デカルト、ニュートン以来の数学的、技術的、機械論的近代自然科学とは異なる汎知学的ないしヘルメス思想的自然考察の系列に属し、現代の細分化された科学技術の行き詰まりとともに、その基本的価値が見直されている。
ゲーテが世界文学に与えた影響は、体験詩の普及、ウェルテル的モチーフの流行、「ウィルヘルム・マイスター」による教養小説的伝統の確立、ファウスト的理想主義の展開など多方面に及び、現代においては彼の全作品の根底に流れるヒューマニズムが諸民族、特にドイツ統一の精神融和に大きな役割を果たした。
ゲーテの「ことば」のほんの一部を記してみよう。
「若き日の願いは老いてのち豊かにみたされる」(「詩と真実」)。
文豪ゲーテのイタリアへの憧れは強烈であった。
「この地には全世界が結びついている。私はこのローマに足を踏み入れたときから、第二の誕生が、真の再生が始まるのだ」(「イタリア紀行」)
ゲーテの宿泊したイタリア・ボーツェンの宿屋の窓に書きつけてあったフランス語の風刺詩。(同上)。
Comme les pêches et les mélons
Sont pour la bouche d’un baron,
Ainsi les verges et les batons,
Sont pour les fous, dit Salomon.
(桃とメロンは
男爵(バロン)の口に
鞭は馬鹿にと
仰(おお)すソロモン
「すべて巨大なものは、崇高であると同時に理解しやすいという、一種独特な印象を与えるものである」(同上)
いかなる時代でもヒューマニズムが政治・学問・芸術の原点である。
(つづく)
- keyword
- ゲーテ
- ドイツ
- 安心、それが最大の敵だ
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方