2019/01/25
ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
在り方検討会は下記の例のような内容で開かれ、検討結果がオンライン上に公表されるが、今回のような殉職者が生じた現場活動改善のための検討会においては、もっとテクニカルで現状の少人数体制の課題を追求し、改善できるような直接的な結果を現職の消防職員が話し合って、今後の火災防御戦術について出すべきだと思う。
また検討会の内容は、ライブ中継またはビデオ録画し、全国の消防職員が視聴できるようにするべきだと思う。さらに可能であれば、ライブ中継においては、ライブ中継に参加を希望する消防職員が事前登録した上で、全国の消防職員からの意見をラインなどで所属と実名で受けたり、オンラインアンケート調査なども同時進行で行うことで、その検討会の精度は高まり、偏ることのない本気の議論が展開されると思う。
下記は在り方検討会の例:
■埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/miyoshimachi_souko_kasai/index.html
能代の大火は過去にも起こっていた。
過去に秋田県能代市で大火があった年月日と、詳しく記述されている資料を検索してみると下記の情報があった。
■能代大火ー昭和24年
https://blog.goo.ne.jp/tatsuouemura/e/35d51f6590fabfef188a6c2c36f6f140
■1949年(昭和24年)2月20日0時35分
https://typhoon.yahoo.co.jp/weather/calendar/302/
以下、レファレンス協同等のデータベースから抜粋:
■秋田県能代市で大火があった年月日
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000128410
1943~72年の間に、秋田県能代市において数十件の大火が起こっているが、それ以前も含めて1000戸以上延焼した火事は、次のとおり。
・寛保3年(1744)9月23日
発生地:清助町 消失戸数:約1,500戸? 附記:53軒(馬苦労町、富町)を残して全町壊滅す。北西の風。(渟城文書)【出典:能代市史編纂委員会 , 能代市史編纂委員会 編. 能代市史稿 第6輯 (現代 上編(明治時代)). 能代市, 1962.
p.278~282 能代港町の火災誌】
・明治13年(1880)6月1日
能代上町から出火して大火となり、1,300戸を灰燼にし、郡役所、渟城学校(旧藩時代の在府屋を修築のもの)等も類焼す(生徒数300名程)。 【出典:能代市史編纂委員会 編. 能代市史年表. 能代市, 1965.p.66】
山本郡能代湊町上町(現能代市)から出火、1,268戸を消失(通称「小走り火事」)【出典:秋田魁新報社/編. 秋田大百科事典. 1981.p.180 火災の項】
・昭和24年(1949)2月20日
住家1,295棟、非住家942棟、1,755世帯被災。通称「第一次能代大火」 【出典:秋田魁新報社/編. 秋田大百科事典. 1981.p.180 火災の項】
・昭和31年(1956)3月20日
住家1,156棟、非住家319棟、1,248世帯被災。通称「第二次能代大火」【出典:秋田魁新報社/編. 秋田大百科事典. 1981.p.180 火災の項】
昭和24年と31年の第一次・第二次能代大火については、次の資料に詳しい記述がある。
「能代市史稿」第7輯 現代-下編 (能代市史編纂委員会/編、能代市役所、昭和39年)p.299~331 二度の大火災
「秋田県災害年表」(秋田県生活環境部消防防災課/編、1990年)には、災害別索引が掲載されており、p.244~248に「大火・特異火災」の項がある。
索引に発生場所と焼失戸数、掲載ページが記載されている。
1976年の山形県酒田市の大火、2016年の新潟県糸魚川の大火など、過去に発生した日本の大火で、今回の秋田県能代市の大火のように木造密集地域で繰り返し大火が起こっているエリアの消防活動においては、真冬の乾燥した時期には特にアラートを上げておかなければならないのと同時に、木造の古い建物においては老朽化はもちろん、建物に使われている内装材料等が難燃・不燃化されておらず、火災による倒壊事故や長年の増築などにより、消防活動の大きな支障になることも十分に予測して活動を開始する必要がある。
下記のリンク先資料を見るとこれから大火を予防するべき地名が載っている。高齢者が多いが、消防士に頼らず、119番通報後に消防が到着する待っている間にも地域ぐるみで大火を起こさない具体的な共助の仕組みを作ることが望まれる。
■Wikipedia:日本の大火
https://ja.wikipedia.org/wiki/Category:日本の火災
■「地震時等に著しく危険な密集市街地」の地区数・面積一覧
http://www.mlit.go.jp/common/000226568.pdf
蛻変のすすめ
蛻変(ぜいへん)とは、動物類が脱皮し、古いモノを頭部から捨て去って、体の表面を構成する組織を次第に更新する等、成長の段階と大きなかかわりがある。脱皮を行わなければ成長も行われず、往々にして脱皮の前後で体の構造が大きく変わることがある。必要に応じて、その都度脱皮を繰り返し形を変化させることをいう。
蛻変を消防組織に置き換えると、消防も最新の社会事情や体制に対応するために
まずは、トップや幹部の頭から古い情報を脱ぎ去って、組織風土、指導方法、訓練内容、火災防御戦術をはじめとする消防活動全般、消防事務の改善など、自らの組織で具体的な指針を策定し、組織の成長に向けて将来の幹部の育成を考え、地域住民のために前進するべきではないかと思う。
火災防御にかかわらず、交通事故、水難救助、山林火災、自然災害における人命検索等、消防活動に関する在り方検討会は殉職事故や大事故が発生してからではなく、発生する前に行われるべきではないだろうか?
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
https://irescue.jp
info@irescue.jp
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