2019/03/06
講演録

8日から復旧作業に就くにあたり、状況を共有するため、酒蔵の従業員全員に出社してもらいました。状況が分かっていれば不安感も少なく、動き出しも早いものです。チームで泥をかき出し、清掃作業をしました。私どもの製造では、年間通して作っていく関係上、同じメンバーによる分業体制の組織ができています。チームごとの動きがとりやすかったことが復旧作業にスピードを与えてくれたと言えます。
9日には記者発表会見を行いました。状況をきちんとお伝えしようということと、巷では転売の動きも見られたためです。また、停電で製造再開できないことを率直に話したところ、その日の夕方には電力が復旧しました。その地域の重要度を電力会社さんに勘案していただけたのだろうと思います。
製造復帰していくなか、発酵中の酒については、救えるものも1〜2割ありましたが、あとは通常商品では出せずに悩みました。そこで「獺祭 島耕作」という復興支援の商品として1200円で販売し、200円を被災地に寄付させていただくことになりました。お盆前の発売に合わせたスピード作業と物流の確保には非常に苦労しましたが、おかげさまで計58万本販売し、1億1600万円を被災地の広島、岡山、愛媛、山口に4等分して8月中に寄付させていただきました。58万本分の被災地を応援したいという人の思いが、モチベーションになったと考えています。
被災後の対策では、浸水に対応できるように、非常用電源のかさ上げ、川岸の防水壁と本社内の防水扉の設置を行いました。それから、会社の2階部分を簡易避難所として利用していただけるように改善しました。そこを避難所にして開放できていれば、今回亡くなられた方もご無事だったかもしれないということが、いまだに悔しい部分です。
(了)
- keyword
- 東京都中小企業振興公社
- 獺祭
- 旭酒造
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/09
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方