多様な価値観への配慮を

これは、私が顧問をしている企業で実際にあった話です。会社は最初、A子さんからの申し出をまともに取り合おうとしませんでした。しかし私に相談が来たことで、会社にはもう少し深く考えてもらうことにしました。

この事例のように、職場では実にいろいろな人たちが働いているものです。それを考えると、会社としては「業務に無関係なものはデスクに置かない」といった緩やかなルールを定めておくほうが望ましいと思われます。

とはいえ、「家族の写真をデスクに飾ること自体がハラスメントなのか」という問いには正解などありません。

たとえば、家族の幸せを理念に掲げる生命保険会社で、社員が家族写真をデスクの上に飾っているのはハラスメントでしょうか。この会社ではオフィスの壁にも、自社のポスターとして家族写真が貼りだされているのです。そのような職場で、上司が家族写真を飾っているからといって「その行為はハラスメントだ」という人は誰もいないでしょう。

また、ゲームの開発会社において、社員が机の上や周りに自社のゲームのキャラクターのフィギュア(小さな人形)をたくさん飾っているのは禁止すべきものでしょうか。自社が生み出したキャラクターを愛し、発想を高めていくためには必要と思われるでしょう。

大多数が納得のルールで解決

もうお分かりの通り、会社の姿勢や必要性によって判断すればよいことなのです。大切なのは、社内の全員は無理だとしても、大多数の人が納得するルールが存在するということです。

A子さんの会社では、人事担当役員も含めた討議の結果、「仕事に無関係なものはデスクの上に置かない」というルールを定め、全社に発令しました。課長が写真を片付けることになったのはいうまでもありません。

(了)