2019/04/26
知られていない感染病の脅威
狂犬病ウイルスの伝播様式
狂犬病ウイルスは、主に発病した犬などの動物にかまれ、かみついた動物の唾液中に唾液線から大量に排出されていたウイルスが含まれており、そのウイルスが傷口から人(動物)の体内に侵入することにより伝播(でんぱ)されます。体内に侵入したウイルスは、末梢神経を介して頭部にある中枢神経組織に達し、そこで大量に増えてさらに各神経組織へ伝わり、唾液腺で増殖します。発病している人や動物は、咽喉頭に麻痺が起こることにより唾液を飲み込むことができず、ウイルスは唾液と共に体外に排泄されます。人から人への狂犬病ウイルス伝播は知られていませんが、ウイルスは患者の唾液中に含まれるので注意は必要です。
発現する臨床症状
1.動物の場合
主として食肉目の動物に典型的な狂犬病の症状が出現しますが、ここでは犬の場合を例にとって説明します。狂犬病ウイルスに感染してから臨床症状が発現して、死亡するまでを次の4期に分けることができます。
(1)潜伏期
ウイルスが体内に侵入してから発病するまでの潜伏期の長さには、大きな幅があります。被害を受けた動物の種類やかまれた部位により異なりますが、おおむね14日から90日と考えられており、まれに半年に及ぶこともあります。
(2) 前駆期
第Ⅰ期、または沈鬱期(ちんうつ)とも呼ばれます。半日から1日続くようです。犬は沈鬱状態に陥りますが、神経過敏になります。特に音に対して強い反応を示すといわれています。通常好まない物に関心を示す異趣性が認められます。これらの通常とは異なる犬の状態を、いつも世話をしている飼い主だけが認識することが多いようです。
(3) 狂躁(きょうそう)期
第Ⅱ期、または刺激期とも呼ばれます。1~2日続くことが多いようですが、犬の体力により異なります。この期には典型的な狂犬様の症状が発現します。犬は狂乱状態となり、通常表すことのない、いわゆる狂犬様顔相を呈し、著しく攻撃的になり、動くもの全てにかみつきます。咽喉頭の麻痺が始まり、飲水不能になります。流涎(りゅうぜん)が顕著となり舌が垂れ下がります。異趣性が顕在化し、通常口にしない石や金属類を食します。そのため、狂犬病で死亡した犬を解剖すると、胃内に釘などの金属破片や石などが認められ、これが狂犬病の診断の根拠の一つとなります。犬の消耗が進み、歩行困難に陥ります。
産業動物が感染した場合、例えば牛が罹患したときには、豚や馬とは異なり典型的な刺激期の臨床症状を示すことはなく、次の麻痺期だけの症状が認められます。
(4)麻痺期
第Ⅲ期、または末期とも呼ばれます。2~4日続きます。このころになると、罹患した犬の後駆麻痺が起き、起立不能になります。麻痺は全身に及び、呼吸不能に陥り死亡します。
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