東日本大震災後のBCP その1
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2016/05/13
危機管理の要諦
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
東日本大震災以降、経営トップ自らが先頭に立ちBCP訓練を行う企業も増えており、BCPに対する姿勢が大きく変わってきていることは言うまでもありません。一方で、まだ本気になれていない企業、担当者だけがやらなくてはいけないと一生懸命になりながらトップが理解してくれない企業、3.11を経験したトップや担当者が変わってしまい危機意識が継承されていない企業なども見受けられます。その格差が震災後は特に大きくなっていると感じております。
先進的な企業は、経営の一環としてBCPをさらに推進・効率化させ、震災に対する備えだけでなく、平時の組織力を向上させることにもBCPを役立てています。想定する事象も、地震だけでなく、洪水、新型インフルエンザ、テロ、サイバー攻撃などと広げている企業もあります。しかし、何もやっていない企業は相変わらず何もやっていません。それでも、法律や制度の効果は強く、例えば東京都の帰宅困難者対策条例により、防災の備蓄率などは大きく高まっていますし、今後、国土強靭化基本計画のもとで、企業のBCPを国が認証するような取り組みも大きな効果をもたらすだろうと推測しています。
問題は、こうした法制度の効果などによりBCPがさらに普及したとしても、それをいかに一過的な取り組みではなく、組織の文化として定着させられるかが重要で、そのためには、個々のマネジメント体制はもちろんですが、もう一方で、外部環境として、社会全体の文化を変えていく全体最適の視点が重要だと考えています。
例えば、採用における会社評価の基準や、取引先との要件(あるいは入札要件)、金融の融資における評価などにBCPをもっと取り入れていくということです。
実際、会社説明会などで自社の防災体制をPRすることでいい採用ができたという事例も聞きますし、金融でもBCP体制を評価し、融資に優遇金利を適用する動きも出てきています。逆の言い方をすれば、BCPは、平時の会社評価の基準にもなりつつあるということです。
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