前回五輪の目前に東京を襲った大渇水
開催が危ぶまれる中、武蔵水路の突貫工事
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2019/05/27
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
昭和39年(1964)、アジアで初めて開催された「世紀の祭典」東京オリンピック大会が、長引く異常気象のため中止のやむなきに至る危機性をはらんでいた史実をご存知だろうか。この異常気象とは何か? 大渇水である。「昭和の一大水飢饉」である。以下、拙書「砂漠に川ながる、東京大渇水を救った500日」(ダイヤモンド社)や水資源機構資料を参考にする。
東京都を中心とする首都圏では、戦後それまでに例をみないほど人口が急増した。東京一極集中が進んだのである。高度経済成長政策を背景として、生活水準の向上、先端産業の発達、さらには都市のスプロール化、乱開発などに伴い、水道水の使用量は急増し、東京都心での水不足が深刻化した。その一方で河川の水質汚濁もその極に達していた。
水不足に追い打ちをかけたのが干天続きの異常気象だった。昭和35(1960)~37年(1962)にかけて、平均降雨量は平年の半分以下と極端に少なく、都民の水源地である小河内(おごうち)ダムや村山・山口貯水池は干上がって湖底に亀裂が走った。大渇水に見舞われた東京都内は砂埃が舞い「東京砂漠」とマスコミに報じられる事態となった。
東京都は、昭和36年(1961)10月から20%の制限給水を開始、39年7月にはさらに35%に強化した。35%の制限給水は、夜間22~翌朝5時、昼間10~16時は蛇口をひねっても水が出ないという厳しさで、一般家庭はもとより、工業用水を大量に必要とする製造業界にも大きな影響を及ぼした。しかしながら雨は降らない。
昭和39年には日本初の東京オリンピック大会開催の記念すべき国際的イベントが待っている。だが一向に慈雨に恵まれず、8月の45%の制限給水時には自衛隊が応援に出動し、2万5000人の隊員が16日間にわたり配水車を走らせて約7000トンを給水した。制限給水は一時、最大50%まで強化され、通算1259日(約3年半)にも及んで、都庁には都民から苦情が殺到した。マスコミでも連日大きく報道され、都政の無策が批判された。節水の呼びかけやプールの使用禁止、雨乞いや人工降雨実験など…。水不足は人々の暮らしに甚大な影響を及ぼしたが、下水道普及の遅れから、水質の汚濁が進み、多くの河川が生活雑排水や工場排水の流入で、悪臭を放つドブ川となった。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク担当者も押さえておきたいサイバーセキュリティ対策の最新動向
本勉強会では、クラウド対応のサイバーセキュリティ対策の動向を、簡単にわかりやすく具体的なソリューションの内容を交えながら解説します。2024年3月8日開催。
2024/03/18
発災20分で対策本部をスタートする初動体制
総合スーパーやショッピングモールなど全国各地のイオン系列の施設を中心に設備管理、警備、清掃をはじめとしたファシリティマネジメント事業を展開するイオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)。元日に発生した能登半島地震では、発災から20分後にオンラインの本社災害対策本部を立ち上げ、翌2日は現地に応援部隊を派遣し、被害状況の把握と復旧活動の支援を開始しました。
2024/03/18
能登半島地震における企業の対応レジリエンスの実現に向けて
能登半島地震で企業の防災・BCPの何が機能し、何が機能しなかったのか。突きつけられた課題は何か。復興に向けどのような視点が求められるのか。能登で起きたことを検証し、教訓を今後のレジリエンスに生かすため、リスク対策.comがこの2カ月の取材から企業の対応を整理しました。2024年3月11日開催。
2024/03/12
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年3月12日配信アーカイブ】
【3月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:東日本大震災 企業のハンズオン支援
2024/03/12
能登の復興は日本のこれからを問いかける
半島奥地、地すべり地、過疎高齢化などの条件が、能登半島地震の被害を拡大したとされています。しかし、そもそも日本の生活基盤は地域の地形と風土の上に築かれ、その基盤が過疎高齢化で揺らいでいるのは全国共通。金沢大学准教授で石川県防災会議震災対策部会委員を務める青木賢人氏に、被害に影響を与えた能登の特性と今後の復興について聞きました。
2024/03/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方