2019/06/14
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■ 総経理交代時は最大の不正チャンス
ここで、責任者交代時によくある事例を紹介しましょう。
A社の前田総経理(現地責任者)は3年の任期を経て、新たに日本からやってくる後田総経理と交代することになりました。
3年間共に仕事をしてきた現地ローカルスタッフは、大変残念がり、「前田さんのことは一生忘れません。また日本に行ったら会いたいですね」と送別会も開いてくれ、前田総経理は後ろ髪を引かれる思いを断ち切りつつ日本に戻りました。一方、後田総経理は、初めての中国生活に期待と不安を抱えながらも、前田総経理が「大変信頼できるスタッフだよ」紹介してくれた比較的長く勤務してくれている現地スタッフ(総務の李さん)を信頼し、新たなキャリアを出発することになったのです。
この企業は、日本人駐在員のために大型バンを運転手付きで年間契約利用しています。後田総経理が赴任して1週間ほど過ぎたころ、李さんから知らされたことがあります。それは車のリース会社を変更したということでした。李さんの説明はこうです。「前回のリース会社は、どうも不正を働いていたようで契約金額と実際の請求額が違いました。従って、私がより信頼性の高いリース会社を探してきましたので、こちらに変更します」とのこと。
これを聞いた後田総経理は、前田総経理が信頼していたスタッフだし、会社の事を考えてくれてよくやってくれるなと感心し、快く承認し新たな企業との契約を行うことになりました。聞いたところによれば、新しい契約方法は、基本リース金額は低く抑え実際に走行した距離を持ってリース金額を支払うということになっているとのこと。後田総経理はますますこの李総務の働きに頭が下がる思いです。契約金額だけ過去のものと比較し大きな差がない事だけは確認したが、後は信頼しているスタッフの言う通りに事は運びました。
■立場を最大に生かすことが実力の証
さあ、読者の皆さま、この話を聞いてどう思われたでしょうか? 「良いスタッフがいる企業ですね!」とか「中国にもこのように企業の事を考えてくれる真面目なスタッフがいるんだ!」と思われたとしたら、皆さんはお人好し過ぎます。大きな間違いです。
まず、大前提として筆者は決して「すべての中国人が悪人だ」と言っている訳ではございませんので誤解のないようにお願いします。今回のこの件、ポイントは何かというと、「中国では自分の立場を100パーセント活用することは善だという常識がある」ということなのです。
何を言っているかというと、「李総務は総経理が交代するという絶好のチャンスを活用し、自分の息のかかったリース会社に無理矢理に変更した」ということなのです。つまり、李総務はこれにより、リース期間中ずっと自分に利益がもたらされる仕組みを作ることができたのです。これこそ中国人のお手本とも言える出来事でしょう。
しかし、これを聞いた日本人の中にはこういう考えを持つ方もいるかもしれません。「ここは中国だし、少しはそのようなことも大目に見なければいけないのでは? 潤滑油でしょ。郷に入っては郷に従うって言うじゃないですか。余り波風立てない方が」と。
ところがです、これが単なる業者の入れ替えだけであればそれも良いでしょう。しかし、現実にはもっとひどい事が行われるのです。昨今はほとんどの自動車がデジタルで走行距離を記憶することになっています。つまり、ちょっとしたテクニックで走行距離を操作することは簡単にできてしまうのです。実際、中国のネットショッピングの大手である「陶宝網(タオバオワン)」では、数百元(1元は約16円)も出せば走行距離を操作できる機械の購入が可能であり、ちょっと気の利いた人であれば数十分もあれば設置が可能なのです。
そう、このリース会社と運転手、そして李総務は結託し、自分の好きなだけ走行距離を延ばし、リース代をまんまと搾取できるようになるのです。
今日は、実際に行われている詐欺行為をご紹介しました。さあ、ではどうやってこれを防ぐのでしょうか。次回にご紹介いたします。(※注:文中に出てくる個人名はすべて仮名です)
(了)
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