2019/08/06
インタビュー

西日本豪雨でもほぼ実績と一致
こういった建物データと気象情報を組み合わせた結果、2015年の台風11号、15号、18号の被害予測と実績はかなり近いものになったという。2018年に開発した豪雨モデルは、降水量に地域ごとの閾値(しきいち)を設定。さらに都道府県が発表した土砂災害危険箇所と、国土交通省が示した排水が困難な地域である低水位帯に含まれる建物を割り出した。これも平成30年7月豪雨(西日本豪雨)時の予測と実績がほぼ一致した。さらに洪水時には国土地理院が発災後に発表する氾濫域を即座に建物データベースを重ね合わせ、被害をすぐに算出することもできるという。地震については250メートルメッシュの地盤データを観測。建物データを組み合わせて、地盤や建物の特性を反映させる。地震では発災後10分程度で被害予測データを出せる。

エーオンでは2015年の台風モデルを始め、独自の災害予測に関する研究を進めてきた。「当社は再保険ブローカーであるが、再保険の手配だけでなく、より付加価値のある情報を保険会社に提供したかった」と岡崎氏は振り返る。さらに顧客であるあいおいニッセイ同和損保が産学合同での研究を希望していたこともあり、三者での共同研究となった。岡崎氏は「横国大は過去の気象情報、とりわけ伊勢湾台風のデータを持っていることは貴重だった」と評価する。
シーマップ公開後は「行政から問い合わせがある他、一般の人からもポジティブな反響が寄せられている」と岡崎氏。今後、顧客である保険会社のニーズにさらに応えていくほか、防災科学技術研究所が中心に開発し、災害時に行政や民間の持つ情報を集約し活用する「府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D)」についても「何らかの関わりができるようになればうれしい」と意欲をみせた。
■「シーマップ」はこちら
https://cmap.dev
■関連記事「あいおい、被災建物数の予測サイトを開設=横浜国大などと」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/17918
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方