2019/08/01
昆正和のBCP研究室
■ドキュメントとしての構成
次に「BCPにはさまざまな文書が混在しているが、何かフォーマットや種類が決まっているのか?」について。一つのBCP(または事業継続計画)と呼ばれる文書の中身は、どのような種類のドキュメントで構成されているのだろうか。目的や用途に応じて、これは次の3種類に分けることができる。
(1) BCP本編
BCP全般の方向性を規定したもの。BCPの基本方針(目標や目的、災害想定など含む)、守るべき事業、対策本部組織、重要業務の継続に必要な手順やリソースのリストで構成。災害発生初期に運用する緊急対応マニュアル(初動対応マニュアル)などについては、BCP本編に含めてもよいし、大企業や中堅企業のようにBCP本編とは切り離して別冊扱いにしてもよい。
(2) 主要なシートやチェックリスト類
初動段階から使用するものとして安否確認シートや社員名簿、被害状況調査シート、重要顧客や取引先、インフラ事業者、行政当局、最寄りの病院等の連絡先リストがある。非常時備蓄品リスト等もここに含めてよいだろう。
(3) その他の補完書類
重要業務の継続や復旧段階で必要となるものとして、重要データファイル一覧、社内の重要設備資産(IT機器や機械装置その他)の仕様・型式・メーカー名のリスト、建物・不動産業者のリスト、重要機器・設備の保守サービス業者リストなど。
なお(1)~(3)の書類をすべて束ねて関係者全員に配布すると重厚なものになってしまう。筆者が中小企業に勧めている方法としては、例えば対策本部メンバー全員には(1) を配布し、(2) と(3) については同時被災の危険性のない数カ所(社長室金庫、総務部、社長宅、総務部長自宅など)にBCP本編と一緒に保管することで配布と管理の負荷を軽減している。
- keyword
- BCP
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方