2016/07/18
噴火リスクにどうそなえる?
■過去に降灰が引き起こした被害
過去に降灰が引き起こした被害では、有珠山の噴火(1977)で降灰が、2㎝以上の地域で目・鼻・咽・気管支の異常等、肉体的障害が報告されている。雲仙普賢岳(1990〜95)では、島原市で、市民の約66%が健康面への影響を受けた。

道路事情に関しては、有珠山で道路上に湿潤時5㎜、乾燥時2㎝の降灰が堆積するとスリップ発生により通行不能となったことが報告されている。これが都市部なら高速の入り口でもスリップ渋滞が起きることが想定される。また、昭和60年には、や鹿児JR島市電が運行不能になった事例がある。「広域的な火山防災対策に係る検討会」が鹿児島市交通局へヒアリングした結果では、電車の車輪とレールの間に灰が5mm程度以上挟まると電流が流れず電車が動かなくなり、信号機や警報機が誤作動する等の障害が生じているという。桜島では、昭和59〜60年に降灰による停電が頻発した。
航空機のエンジン停止事故はインドネシアのガルングン火山噴火(1973年)に伴い初めて発生し、その後、米国アラスカのリダウト火山(1989年)、フィリピンのピナツボ火山(1991年)で発生。ピナツボ火山のケースでは、15機以上の旅客機が火山灰に遭遇し、機の旅客機のエンジンに停止や損傷等のトラブルが発生した。2010年アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火は大量の火山灰により、世界全体の航空便29%に影響を与え、航空会社に約17億ドルの経済損失をもたらしている。2011年チリのコルドンカウジェ火山の噴火では、噴き上げられた火山灰が数日で地球をほぼ一周し、ニュージーランドとオーストラリアの航空便が停止するという事態も生じた。
気象庁の降灰予報の高度化に向けた検討会(座長:田中淳東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長教授)の第1回検討会(2012年7月)では、2004年に富士山ハザードマップ検討委員会が発表した報告書や、過去に実際に報告された事例から、降灰の被害が分野別に紹介されている(下図表)。
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