これまで日本は多くの地震に見舞われており、2011年に東日本大震災、そして2016年には熊本地震が発生し、それぞれ大きな被害が出ています。また、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の被害想定も東日本大震災後に見直しが終わっており、その被害の大きさが懸念されています。併せて近年は、地球温暖化の影響もあり、集中豪雨や台風に見舞われる頻度が増え、その被害も激甚化しています。

しかしその一方、特に中小企業では、防災計画がまだ策定されていなかったり、あるいは地震以外の災害に対する備えが不十分であったり、防災への準備もまだまだこれからという状況です。

この連載では、防災活動を始めなければならないと考えている、あるいはトップから防災計画を策定するように言われているが手が付けられていない担当者に向けて、「これだけはやっておこう」という点を中心に解説します。

概論編

1.防災活動に取り組む目的を明確にする
何事も、その目的が明確でないと、的確な準備ができません。まず、防災活動を進める目的をはっきり定めておきましょう。

(1)命を守る
防災活動では、身体・生命の安全確保を最優先することが重要な目的であり、具体的には災害が発生した際の死者数をできるだけ少なくすることが求められます。

災害に見舞われた際、生き残った従業員の数が少なければ、その後の復旧活動を円滑に進めることが難しく、また事業を継続していくことも困難です。逆に、生き残った従業員が多ければ、災害の復旧にも多数で取り組むことが可能となります。「命あっての物種」ということわざの通り、まさに、身体・生命の安全が確保されてこそ初めて、災害後にやるべきことに対応できます。

それでは、命を守るためにどのようなことが求められるか、地震を例に取り具体的に考えます。