2016/07/25
誌面情報 vol56
トヨタ自動車では、4月14日夜の前震以降、国内における完成車の組み立てラインの稼働を段階的に停止。4月18日から23日にかけ、トヨタ自動車九州の2ラインを止めたのを皮切りに一時は本体ほぼすべての生産ラインを休止した。
原因となったのは、アイシン精機の子会社アイシン九州(従業員610人、売上高229億円)の被災だった。1993年にアイシングループの中核拠点として発足。ドアやサンルーフ、パワーシート、エンジン部品を主に生産している。このうち、ドアの開閉を制御する「ドアチェック」という部品が今回の地震で生産できなくなった。ドア開閉時の節度と開度を一定に保持するための製品で、開閉時にレバー部を樹脂部品とゴム部品で保持するシュータイプと、鋼材でできたローラーとスプリングで保持するローラータイプと大きく分けて2種類あり、車両・グレードなどにより使い分けている。1カ月の生産量は約90万本で国内シェア1位を誇る。
1万3000 社をデータベース化
一方のトヨタ自動車では、2011年3月11日の東日本大震災で車載マイコンなどをつくる仕入先が被災したことなどにより、生産の再開まで約5週間を要したことから、部品などの仕入先を最大限把握できるようデータベース化を進めてきた。
その数は正式発表されていないが、日経新聞2015年3月9日付朝刊では、「約4000品目の部品について、関係のある1次や2次だけでなく、トヨタ本体はほとんど情報を持っていなかった10次以降までの取引先の協力を得て生産場所や緊急連絡先をデータベース化した。対象は約1万3000社、約3万拠点に及ぶ」と報じている。
今回の地震は対策が十分至っていないサプライヤーの弱点を突く形で発生した。
「まだ対策は道半ば」
「直接の仕入先のみならず、2次仕入先以降も含めサプライチェーンがどうなっているか、例えば1拠点だけで作っている品目はないか、仕様が特殊だったり工程や材料が特殊だったりすることで代替が難しかったりする製品はないかという調査はずっと進めてきています。特定できた品目から調達拠点を分散してもらうとか、生産拠点で災害が起きたときの被害を軽減するなど徐々に対策も実行してもらっています。仕入先各社においてもBCPの策定・改善は進めてもらっていると聞いています。しかし、車1台あたりの部品が3万点ぐらいから構成されていることもあり、まだ対策は道半ばと言わざるを得ません。優先順位の高いものから取り組ませてもらっていますが、どうしても対策に時間がかかってしまうものもあります。今回の地震は道半ばの中で発生してしまいました」(同社広報担当者)。
誌面情報 vol56の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方