2019/09/02
安心、それが最大の敵だ
権威づけに利用された吉田松陰
出口:伊藤博文は大久保利通、山縣有朋は西郷隆盛の威光を背負ってリーダーになったわけですが、さらに彼らは長州人として吉田松陰の威光を最大限に利用したといわれています。
半藤:はい。私に言わせれば吉田松陰はむしろ危険な人物にすぎないんですがね。
出口:吉田松陰は早く死んでいますしね。
半藤:伊藤、山縣は箔を着けるために、自分たちは松下村塾の門下生であると強調しました。ほかの松下村塾出身者の優秀な人たちは、蛤御門の戦いあたりでみんな死んでいますからね。(中略)。
出口:優秀な人たちはもう死んでしまっていて、伊藤と山縣ぐらいしか残っていなかった。そう意味では売れ残り感のある人たちだともいってもいいんでしょうか(笑)。
半藤:吉田松陰にいわせると、山縣は「丸太ん棒」だそうです。その何の役にも立たない「丸太ん棒」が残っちゃったんですよ(笑)。吉田松陰そのものも大した人物ではないが、伊藤と山縣はその門下生の中でも大したことないんです。
出口:それなのに、権威付けのために吉田松陰をフレームアップしたというわけですね。
半藤:そうだと思いますね。それまで大して注目されていなかったのに、彼らが「維新の原動力になったのは吉田松陰の教えだ」と言い始めた。
(引用者・高崎:半藤氏は対談時88歳だという。同書の「あとがき」で氏は苦言を呈す。「それにつけても、いまこの国はよき人材が少なすぎるのではないか、ということへの憂えがいっそう強まりました。若い人たちに積極的に本を読んで日本と世界のことを勉強しようという意欲があまりないのではないか。・・・」)
謝辞:「明治維新とは何だったのかー世界史から考える」(半藤一利・出口治明対談、祥伝社)から引用させていただいた。心から感謝いたしたい。
(つづく)
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- 戊辰戦争
- 明治維新
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方