2019/09/02
安心、それが最大の敵だ
何故ペリーは来たか?
出口:半藤先生は、マシュー・ペリーがなぜアメリカ艦隊を率いて日本に来たとお考えですか。
半藤:いきなり一言では答えるわけにはいかない難しい問題ですね(笑)。あのときペリーの東インド艦隊は、まず沖縄にいきました。さらに小笠原諸島に行ってから、浦賀沖に来たんですね。何しに来たかというと、これについてはアメリカ合衆国のフィルモア大統領からペリーへの命令書があります。ちょっとそれを読み上げてみましょう。
「我が政府はこの遠征によって我が国のためならず排他的な商業上の利益を獲得しようと求めるものではない。この遠征によって我が国が収得すべき利益は、やがて文明社会全般が享受すべきものである。艦隊司令長官は全兵力を率いて日本に赴き、もっとも適当と思える地に寄港し、大統領から託された親書を伝えるよう命令する」
この命令書をそのまま信じれば、アメリカは先ずアジア諸国を植民地化していた西洋列強の間に割り込んで日本を植民地化しようとしたのではなく、全世界のためになるような交易を始めようとした。そう受け取れるんですね。
出口:率直に読めば、そうですよね。
半藤:はい。しかし当時、アメリカは太平洋の通商で一歩も二歩も遅れをとっていました。すでにイギリス、フランス、オランダなどが航路を開拓していたので、アメリカに残っていたのは日本ぐらいしかなかったんですね。そこで日本を、蒸気船の燃料である石炭の補給地にしたかった。また当時は捕鯨が盛んでしたから、捕鯨船の寄港地も必要でした。燃料や食糧の補給に加えて、怪我や病気をした乗組員を保護する場所が必要だったんです。それが2つ目の理由。もうひとつは、アジア市場競争にアメリカも乗り出すにあたって、シ―パワーを身につけるために、日本列島に基地を置きたかった。私が調べた範囲では、以上の3つがペリーを日本に送り込んだ理由です。しかし一番の目的は3番目のシ―パワーの獲得です。大統領の命令書を少し裏返すと、そういうふうに読めるんじゃないかと思います。
それで、もし日本の開港が不成功に終わった場合は、琉球列島を征服してアメリカの領土にするつもりだったようですね。
(中略)
出口:ペリーが連れてきたのは、当時の最新鋭艦ですよね。
半藤:そうです。4隻のうち、サスケハナ号とミシシッピ号は、最新鋭艦の中でもトップクラスの蒸気外輪フリゲートでした。
出口:昭和の日本でいえば、戦艦大和と武蔵を一緒に連れて来たようなものでしょう。なぜアメリカ海軍の中でも一番強力な船を連れてきたかといえば、それだけアメリカの国益にとって重要な任務だったからです。もちろん国書には捕鯨のことも書かれていましたが、そのウエイトは小さかった。一番の大きな目的は、太平洋航路の開拓ですよね。
半藤:しかし、よその文明国にほとんどの寄港地をとられていたので、日本がポコンと浮かび上がったわけです。
(中略)
半藤:アメリカには日本に港を開かせて、そこをアメリカの拠点とするという明確な目的がありました。だから強硬なんです。
(中略)
半藤:シ―パワーというと武力だけのように解釈されることが多いのですが、実は通商がシ―パワーの基本なんです。通商をしっかりやるために、それを守るための武力が必要になる。そういうシ―パワーの争奪戦だと考えないといけないですね。
出口:要するに、根本は商売の話だと僕は思うんです。
- keyword
- 安心、それが最大の敵だ
- 戊辰戦争
- 明治維新
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方