大いなる善意である義援金が、唯一の現金支給支援となる被災者も多いです

義援金(義捐金)とは、被災者を支援するための寄付金全般のことを指すのが一般的だと思います。一方で、金銭的な支援をする側からすれば、個人や法人から、直接被災者や被災事業者へ支援するケース、被災者支援や復興支援を担う団体へ支援するケース、被災地の都道府県や基礎自治体などの行政機関へ支援するケース、直接または間接的に日本赤十字へ支援するケースなど、様々なパターンがあると思います。

ここでは、義援金をもらう側、すなわち被災者の目線から考えて整理をしてみます。そうすると、多くの義援金は、いろいろな窓口から被災地の都道府県や市町村など自治体に集められ、自治体側で義援金の配分を決定し、被災者に対して、第1次、第2次、という具合に順次配分することが多いはずです。ですので、通常「義援金」といえば、自治体を通じて被災者に配られるものと理解するとよいのではないでしょうか。

義援金は、住家被害の程度、家族に亡くなった方や行方不明者がいるか、災害によって負った障がいの程度、個人事業主などで事業所が被災した場合など、様々なカテゴリーについて、金額が決められることが通常です。一律のルールはなく、当該災害における被災地の被害の実態に応じて、自治体ごとに個別に決定されています。

たとえば、全壊住家のほかにも、半壊住家や一部損壊住家が多く、再建困難が続く被災地では、半壊や一部損壊にも、一定程度の義援金を配分することが実施されています。特に半壊や一部損壊住宅には、被災者生活再建支援金(第15回「住まいの全壊等には被災者生活再建支援金を」参照)の支払がありませんので、義援金が唯一の現金支給支援となる場合もあります。

このように、義援金は、必ずしも十分な公的支援が受けられない被災者へ給付支援をする原資にもなるのです。

ちなみに、東日本大震災、熊本地震、2018年6月の大阪府北部地震、同年7月の西日本豪雨では、自治体が被災者へ配布する「義援金」を「差押禁止財産」とする特例法が弁護士らの提言もあり成立しています。義援金が、被災者の生活再建の原資として確実に手元に残るようにという願いが、特例法を生みました。ただし、この記事を書いている2019年9月時点では、義援金一般に対しては、このような措置はとられていません。今後の災害でも義援金は全国から寄付され、被災者へ配分されます。義援金全般を差押禁止財産とする立法は早急に必要なはずです。今後の政府の動向などにぜひ注目いただきたいと思います。

(了)