2016/09/27
誌面情報 vol56
修学旅行の影響を避ける
村長の言葉と余震集計を出した一番の理由は、修学旅行を考えてのことです。もし、保護者から「地震があったから、白馬村には行っては駄目」と意見が出ると、学校としては行き先を変更せざるをえません。そうすると200 ~ 300人が2、3泊する何百万円のお金が一気になくなります。しかも、行き先を変更してしまうと2、3年は戻ってきません。ですから子どもたちの保護者や旅行会社から聞かれる前に、こちらから情報をどんどん出そうと意識していました。
ライターを招聘
地震から1週間ほどは白馬村の被害がニュースで取り上げられましたが、やはり最も被害の大きい地域の様子を伝えるだけで、当然、他の地域は「大丈夫」だとはニュースバリューがないので報道してくれません。ニュースだけ見ていた人は「白馬は大変だった」というイメージを持ったまま止まってしまいます。ですから「今の白馬はこういう状況ですよ」と丁寧に伝える取り組みを始めました。
その一例がライター招聘事業です。白馬村とYahoo!はいい関係を築いていて、「こういう課題を持っているんですが、何かできないでしょうか」と担当者に相談したところYahoo! Japanのニュースチームの方から紹介していただいたのがこの事業です。3人のライターの方に来ていただき、見たままの白馬の現状を発信してもらう企画で特にこちらで情報を操作することはありませんでした。2月に実施しましたが、私の中には地震後2 ~ 3カ月がたちスキー場もしっかりと稼働し、お客さんにも来ていただいて自粛ムードにはなっていませんでした。ですからどういう形で取材されても観光にマイナスの情報を発信されることはないと考えていました。
他にも長野県と白馬村、隣の大町市、小谷村とのスキー場の共同プロジェクトを実施しました。お金を出し合って、多角的に風評被害をなくす取り組みです。新聞やラジオ広告をはじめ、ウェブではYahoo!と楽天の検索サイトへの広告や宿泊施設の予約サイト「じゃらん」へ広告を出しました。
首都圏ではメディア向けの記者発表もやりました。それぞれの自治体の首長が顔をそろえ、ゆるキャラも連れての会見です。「安心して来てください」というメッセージを伝えるためです。長野県の建物「銀座NAGANO」でPRイベントも行いました。旅行会社やメディアの方々に来て、実際の今の白馬を見てもらう取り組みもやりました。そういった多角的なことを総額1700万円かけてやりました。
マスコミ対応のポイント
様々な風評被害対策を講じた結果、白馬村のスキー場の利用者数は八方尾根スキー場が2%減、岩岳が2.1%減、五竜・47が8.4%減でした。やはり風評被害はあり、減少しましたが、対策が実を結んでこの程度の被害で収まったと思っています。というのも隣の小谷村のスキー場は12%減でした。このスキー場もほぼ同じ状況だったにもかかわらず違いが出ました。及第点なのかなと思っています。
誌面情報 vol56の他の記事
- 組織の風評被害対策アンケート
- 企業の魅力度が風評に影響する
- 不祥事対応における風評発生メカニズム
- 被害のパターンを見極めることが大切
- 風評マネジメントで観光を立て直す
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方