2016/09/27
誌面情報 vol56
受け取り手の感情と伝えるイメージ
情報を発信するときに注意すべき「受け取り手の感情」と「伝えるイメージ」について話します。我々が一番伝えたかったのは「大丈夫だから白馬村に来てくれ」ということです。でも受け取り手が「地震があって被害に遭っている人たちがいるのに・・・・・・」と思ったらどうでしょうか。
実際の例です。26日に村内在住の方が、「村内の被害は一部だけでスキー場や宿泊施設は無事なのでぜひ来てウィンタースポーツを楽しんでほしい」という内容をFacebookに投稿しました。非常に多くシェアされましたが、被災された住民がこの投稿を見たらどう思うでしょうか。
ここで問題なのは「一部以外は大丈夫」と書かれた点です。もし、私や村長が地震の直後にテレビや新聞のインタビューでこう答えていたら「白馬村、ひどいところだね」と批判されたかもしれません。我々もプラスの情報を出したくて、投稿した方と同じ気持ちでしたが言葉選び一つで失敗する可能性があります。ですから受け取り手の感情をしっかり考えないといけません。
東側に被害があったけれどスキー場側(西側)は大丈夫だと伝えたい。そう考えてつくったのが被害マップです。言葉では言えないので視覚的に伝えたわけです。「さのさかスキー場」のすぐ近くの集落で倉庫の損壊や岩岳地区でも一部損壊がところどころでありました。
しかし、この情報をそのまま出すと「やっぱり危険だ」とイメージされます。我々の作った地図では住宅の全・半壊だけを載せて嘘偽りはないけれども倉庫のちょっとしたヒビなどの情報は掲載しませんでした。視覚的な情報で受け取り手にイメージしてもらえればよいという形です。嘘偽りはない中で、きちんと情報のイメージ戦略を実施した一例です。
他には地震の4日後には車載カメラでお客さんが集まるエリアや村内の道路、長野から入って来る道、被災した堀之内地区でも撮影し、何もコメントをつけずにYouTubeやFacebookで流しました。見ていただくとわかりますが、道路もガタガタではないし建物も崩れていない。これを感じてもらえればと思いました。
英語でも情報発信
もう1つの風評対策に白馬村の村長にメッセージを書いてもらいました。日本語で書いたものを要約すると「ご心配やご支援いただきありがとうございます。地震があって被害はありました。けれども大丈夫なところもあるのがこの地震の特徴。ご理解ご協力をお願いします」というような内容です。
英語版もつくりました。英語版はホームページに掲載しましたが、日本語版は旅行会社に郵送するだけにしました。それは、地震後まだ1週間でこの内容が白馬村内に知れ渡る影響を考えたからです。こうやって、伝えたいところにだけ情報を届けました。英語版はホームページに載せただけはなく、外国人を受け入れている旅行会社や宿泊施設を通じてお客さんにも届けられました。
余震情報は常にチェックし地震後1週間~ 10日ぐらいは余震情報を出し続け、その後は1週間単位で集計して「白馬ではこれぐらいの余震がありました」と発信しました。
12月に入るとほとんど余震も収まっていて、中旬に震度3の地震が1回あっただけ。その後は1月末まで地震は発生せず、余震の長引かない地震でした。こういった情報をしっかり発信することで風評被害をなるべく抑えようとしました。
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