2019/10/04
危機管理の神髄
「トランプ大統領いわく、緊急時には州は連邦の資金に頼ることができる」
—AP通信 2017年8月4日
大統領の大災害宣言があれば、全ての対応費用の75%は連邦政府によって賄われる。さらに好ましいことには、州の負担すべき25%も決まって免除される。例えば9.11のときは、FEMAが対応費用の100%を支払った。テキサス州のハリケーン・ハービーに関しては、FEMAが”緊急事態保護対策“と呼ぶものにかかった費用の全額の連邦負担を大統領は承認した。
「それの何が問題なのだ」と思っているだろう。「無償の資金援助に勝るものはないのでは?」
第一に、ランチでもそうなのだが、“無償の資金”などというものはないということである。詳細は後述する。第二に、より重要なこととして、連邦の大災害宣言のプロセスが生み出す期待が問題である。それはモラルハザードとして知られる不幸な現象である。モラルハザードは“災害の結果から守られていると思うことによって、災害に備えようという動機が欠けてしまうこと”と定義することができる。連邦の大災害宣言のプロセスによって生じるモラルハザードは、マリア級の災害に対する州の準備を不十分なものとさせる。州は“救いの騎士がやって来る”という神話の呪縛に囚われてしまう。
この神話が彼らに、支援が必要になるならいつでもそこにあるのだから、そんなに一生懸命災害の準備をすることはないと思わせるのである。“救いの騎士がやって来る”という神話が奏功して、支援を要請さえすれば大規模な連邦の対応が開始されるという虚構が世間一般に受け入れられる考え方となる。
モラルハザードのハザード
その例としてはマリア級の災害を見てみる必要がある。幸運なことには本物のマリア級の災害はまれである。対応を誤った2005年のハリケーン・カトリーナ以外には、ロートン・チャイルズというフロリダの政治家が知事になってから1年に満たない1992年までさかのぼらなければならない。
8月24日の月曜日、カテゴリー5のハリケーンであるアンドリューがフロリダ州ホームステッドの町をすき倒して、家屋をその基礎から引きはがして粉々にした。デイド郡マイアミでは風速165マイルの風が2万5,500棟以上の家屋を破壊し、10万1,000棟以上の家屋に損害を与え、破壊された家屋にいた65%の人が死亡した。そして余波がやって来た。
—ニューズデイ
—ザ・タイムズーピカユン
「どうしたらこのようなことになるのだ?―大気は死んだ動物、人間の出すゴミ、浸水した布で悪臭を放った。州兵は暴徒化した群衆をコントロールできない、飢えた人に食料を供給できない、警察は通りを見回れない、との報告が大統領になされた」
―タイム
アンドリュー上陸の3日後、デイド郡緊急事態管理局長のケイト・ヘイルはテレビ中継された記者会見で、「この地獄のどこに、このときに、騎士はいったいどこにいるのか?彼らは物資を届けると言い続けている。一体全体、彼らはどこにいるのか?」と言った。
デイド郡の住民はその時点まで、基本的には自衛するしかない状態に置かれた。アンドリュー上陸の直後、FEMAは大統領の指示を待っていた。大統領はフロリダ州知事からの文書による支援要請を待っていた。知事はそのような要請をする必要があることを知らなかった。
そして責任のなすりあいが始まった……
ハリケーン・アンドリュー;連邦のストーム援助に破綻あり
―ザ・ニューヨーク・タイムズ 1992年8月28日
アンドリューに先立つ何カ月、あるいは何年も前、チャイルズ知事、より正確にはチャイルズ知事の災害チームはモラルハザードの影響を受けていた。その結果からは守られているのだから、災害準備をやりすぎることはないという誤った考えにとらわれていたのである。FEMAが騎士を連れてやってくると希望し信じていた。ホームステッドの住民にとっては不幸なことであったが、騎士は来なかった。
経験の恩恵
あなたが期待するように、フロリダはアンドリューから多くのことを学んだ。この経験は、2000年代の破滅的な嵐(ジャン、デニス、ウィルマ、アイバン、チャーリー)の経験と同様に、フロリダ州災害チームをFEMAに抱いていた幻想から解放した。2017年のハリケーン・イルマの際のフロリダにおけるFEMAのうわべの成功の大部分は、フロリダが多くの援助は必要としていなかったという事実に負うものである。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
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