2016/09/30
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
今だからこそ伝えなければいけない。「だっことおんぶ」の話
園田さんやその時出会った方の励ましのおかげで、今も私は防災講座を続けているわけなのですが、2010年以来、現在もコラボを続けている理由は、さらに2つあります。
まず、1点目。現在、東京大学大学院学際情報学府でだっことおんぶを研究されている園田正世さんなので、徹底したエビデンスベースなのです。
だっこやおんぶというのは、各人の思い出があり、思い入れの強い分野だと思います。だから、それぞれの人の成功例だけが語られやすく、トンデモとまでは言わないものの、ちょっとそれ・・ないわ〜という技が広まりやすいというか・・具体的には後でまた。
2点目。グッズさえ持てば解決っ!みたいな安易な方法ではなくて、子どもと一緒に生きている時間を楽しむために、親もスキルを身につける。しかも、普段からできる知恵として伝える。それは、私が防災講座でずっと伝えていることと、分野は違うのに全く同じだったことに感動した点です。
で、私たちがどんなことをお伝えしているかというと、2010年の段階では、余裕があればベビーカーで避難しましょうとか、避難所でベビーカーが役に立ったという話が育児雑誌には多く書かれてありました。
そこで、私は、「タイヤの半径以上の段差は乗り越えられない」というキーワードを作りました。
液状化や瓦礫の散乱、地面が揺れる災害時にタイヤのあるものが使えない可能性を説明しなければと思ったからです。
また、だっことおんぶのスキルはアウトドアのリュックの仕組みと同じで重心を上に、揺らさない事がポイントになることをお伝えしました。
「だっことおんぶの研究所」は、以下の具体的スキルを伝えてくれました。例えば、さらしを使っただっことおんぶ。
出典:Youtube 「だっことおんぶができる兵児帯の使い方」(北極しろくま堂)
おんぶは昔から、兵児帯(へこおび)という男の人の帯で実施されていましたが、伝承が途絶えているそうです。でも、赤ちゃんが背中から見えると重心が上にあがりますし、さらしだと揺れないから、ほんとに軽いんですよ。軽い方法だから、昔は、子守りをする子どもが赤ちゃんをおんぶするってことも可能だったのですね。
家の中だけでも軽くなるから、毎日やってみてとおすすめしたら大好評で、秘かなブームになっているっぽいと思っています。
講演後にべんがら染めや玉ねぎの皮染め、藍染にはまったという子育てグループもあります♪虹染めも素敵です。
「前がばってん」になるおんぶは胸が強調されるから嫌だという思いから、前からみてリュックの肩紐になるようなおんぶも工夫されています。
(写真提供:NPO法人だっことおんぶの研究所」
https://www.babywearing.jp/blog/2015/12/29/384
帯の形をいろいろ工夫して、華やかな帯結びを競った着物時代の感覚ってこんなだったのかなと思います。今でも使われる、振袖の代表的な帯結び、「ふくら雀」は、優雅なネーミングっぽいですが、「ふくら雀」=蛾 と、モデルは蛾なんです。
着物時代の人々の自然の観察力や感性、そして布を使いこなす技術力にはまだまだ及ばないけど、工夫をはじめてしまう親たちの感性と防災への応用に希望を感じます。
出典:Youtube 「抱っことおんぶができる【兵児帯】の使い方/前結び」(北極しろくま堂)
出典:Youtube 「抱っことおんぶができる【兵児帯】の使い方/後ろ結び」(北極しろくま堂)
おんぶもだっこもできてしまって、軽くなって、毎日使いたくなるさらし技。最近では、防災グッズセットにも さらしが入っていることがあって、普及してきたなあと思います。
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