トップが迅速に判断・意思決定できる体制
準備編その2 地震防災の社内体制を考える
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2019/10/23
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
地震は、その発生時期を正確に予測することが難しい突発的災害ですから、発災前にどれだけ準備できているかが極めて重要です。
防災活動の取り組み主体としては、守るべき従業員や建物・設備を主管する総務・人事部門が中心として体制を組むことが大切であると、連載第2回で説明しました。今回は、防災活動の社内体制について、地震に対する事前準備の観点から具体的に解説します。
1.地震防災の社内体制
地震防災の社内体制は、防災活動を円滑に進めることができる実践的なものであることが大切です。必ずしも、一から作り上げる必要はなく、すでに立ち上がっている自衛消防組織や危機管理の体制などをもとに構築するとよいでしょう。
(1)必ず、経営責任者がトップになる
防災活動の社内体制では、必ず社長などの経営責任者をそのトップに置き、リーダーシップを発揮させることが重要です。
防災活動の推進にはコストがかかります。例えば、地震に対する事前準備であれば建物の耐震工事、自家発電装置の導入、また防災備蓄の購入など相当の金額が必要となります。そして、それらの投資を行うかどうか、さらに投資する場合でもその優先順位をどうするかについては経営責任者の判断が必要となります。また、実際に地震が起こった場合にも、各部門の間で従業員をどのように融通しあうかなど、部門を横断した調整なども必要ですから、こちらもトップが迅速に判断・意思決定できる体制が重要です。
(2)各部門から幅広いメンバーを体制に組み入れる
地震が発生した時は、さまざまな経営資源が限られる中で復旧活動に取り組む必要があるため、社内各部門の協力や連携が必要です。
防災活動の社内体制は、総務・人事部門を中心に組みますが、製造部門や営業部門など他の部門と連携してこそ、復旧活動などを円滑に進めることができます。そこで、社内体制では各部門の幅広い人材をメンバーとしておくことが大切です。
(3)代行順位や権限移譲を決めておく
大きな地震が発生すると、自社の従業員が全員無事であるという保証はなく、また無事であった場合でも、遠方に出張中で戻れない、また本人は無事でも家族が負傷しているなどさまざまな事情で会社に出勤できない可能性があります。
そこで、防災活動の社内体制においては、ある従業員が不在の場合に、その欠員を誰が埋めるのか、またその際、代行者には権限が委譲されることを決めておく必要があります。例えば、本部長を務める社長が不在であれば専務が、さらにその専務もいない場合には本部メンバーである部長のうち最上席の部長が本部長を務めるというルールです。
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