出典:Paul Combs

3、メーデーの訓練方法

まず、過去のメーデーが発信された災害事例の多くは、圧倒的に隊員の空気呼吸器による事故とのことです。原因としては次の通り。

①残圧が減り、退出アラームが鳴り響き、退出先がわからなくなった、脱出できない状態になった、または、仲間の隊員が何らかの原因で倒れて意識不明になった
②空気呼吸器が故障して、呼吸できなくなった、空気ホースや面体へのコネクターは破損し、明らかに安全な状態で脱出できない状態にあるとき
③ 大丈夫という過度の自信があり、退出予定ルートが閉鎖された事にも気づかず、退出が遅れてしまい、空気呼吸器のエアを使い切ってしまって救援が必要になった

主な訓練方法は、下記の通りです。

①  できるだけ、長い時間、空気を吸えるように吸気はスゥ〜っと可能な限りゆっくり細く吸い、呼気はスキップビリージングというプップップップッと細く長く吐くことを繰り返す。スクーバダイビング時の呼吸法と同じ。

② フル装備で配線やワイヤーなど、体が絡まった状態からの脱出訓練でパニック状態にならないためのセルフレスキュー法を身につける。

③  隊員全員がメーデーの発信訓練を行い「どの隊の誰が、どこで、どうなっているのか?」のセンテンスを覚え、落ち着いて応援隊が駆けるのに十分な情報を提供する訓練。

メーデー発信内容の覚え方:LUNARS
Location(場所):建物内のどこに居るのか?時計の時刻版のように建物の中心を軸として、何時方向の地下1階に誰と居るなど
Unit(ユニット):所属隊名称と一緒に居る人数、どの隊員が活動可能で、誰が自力避難不能かを告げる
Name(名前):誰がメーデーを発信しているのか?
Air Supply(空気呼吸器):替えの新しい空気ボンベや呼吸器がいくついるのか?
Resources (どのような助けが必要か?):具体的な危機状況をわかりやすく伝える。たとえば、建物倒壊事故の場合、コンクリートに下半身を建物に挟まれているため、空気マット式救助器具と歩けないため担架が必要など。もし、隊員が意識不明の場合は、パラメディックを要請し、酸素や輸液など最大限の処置ができるよう要請する
Situation(状況):自力避難できない状況をわかりやすく伝達する。どのような状態にあるのか?さらに悪化する危険があるのかなど

メーデーを受信している人はメーデーを発信している隊員の状況を考慮し、簡単には説明できないことや、痛みや苦しみに耐えながら送信していることなどを予測して、十分の話させる時間を与えることが大切です。

また、LUNARSはあくまでも最低限の情報伝達内容を覚えるためのもので、他にも情報を伝えなければならない場合は、LUNARSにこだわる必要はありません。いつでも、現場状況に応じての必要な装備要請など、隊員や要救助者の人命救助を最優先してください。

④  危険予知訓練、様々な災害現場を想定してのシナリオ訓練で次に何が起こるかを予想し、予想したことを全員に発表し、危険予知意識を共有する。