2019/11/20
中小企業の防災 これだけはやっておこう
(2)従業員の出社・退社に関する考え方
台風が接近して風雨が強くなるタイミングが、従業員の出社・退社の時間帯に重なる場合は、従業員の安全確保を最優先して指示を出す必要があります。
・ 翌日の出勤時間帯に風雨が強まる場合は、在宅勤務にする、あるいは台風通過後に出勤するなどの指示を出す
・ 月曜日など、休日の翌日に風雨が強まる場合は、休前日に指示を行う
・会社に出勤後に風雨が急に強まった場合は、風雨がおさまるまで社員の帰宅を抑制し、必要に応じて宿泊などの対応も検討する など
これらの対応、特に在宅勤務や会社での宿泊などは、準備なしに実施できるものではありませんから、平常時から在宅勤務システムの構築、鉄道事業者による計画運休が行われる際のルールの策定、また会社での宿泊体制の準備などを進めておくことが求められます。
(3)休日・夜間における従業員の安全確保
台風などの接近は、平日の勤務時間帯に限らず、平日の夜間や休日に起こる可能性もあります。企業は、自宅にいる従業員やその家族の安全確保に向けて、次のような点を従業員に周知徹底しておきましょう。
①避難
2018年7月に発生した豪雨を教訓として、2019年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」の改定が行われています。
「警戒レベル」を用いた避難情報(表1)が発令されますから、避難のタイミングを逃さないよう速やかに避難することが重要です。特に、家族に高齢者や乳幼児など避難に時間がかかる人がいる場合は、「警戒レベル3」の段階で避難することが求められています。
(表1)「警戒レベル」を用いた避難情報

これらの避難情報に基づいて、高台にある避難所などに移動する水平避難が原則ですが、夜間で風雨が強く、避難に伴う危険が大きいと考えられる場合は、自宅の2階以上に垂直避難することも検討します。
これらの避難情報は、必ずしも「レベル1」から順番に発表されるとは限りません。また、過去の災害では、市町村からタイムリーな避難情報が発令されなかったケースもありました。自分の命は自分で守るという強い意識をもって、的確な避難行動をとりましょう。
②非常用持ち出し品
避難所に避難しようとする際、それから持ち出し品を準備していたのでは避難が遅れてしまう可能性があります。さっと持ち出せるようにあらかじめ非常持ち出しの物資を準備し、リュックなどの袋に入れておくことが大切です。
この袋の中には、避難所で救援物資などの準備が整うまでをしのげるように、飲料水や食料(そのまま食べられるもの)などを入れておくとよいでしょう。
【ここがポイント】
水害対策は、実際に台風などの風雨が強まるまでにどれだけ準備ができるかがポイントです。
1.人命、そして設備・機器を守るハード面の対策を事前に実施する
2.従業員を出社・退社のタイミングで危険にさらさない
3.休日・夜間における従業員の安全確保も忘れない
(了)
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方