(2)従業員の出社・退社に関する考え方
台風が接近して風雨が強くなるタイミングが、従業員の出社・退社の時間帯に重なる場合は、従業員の安全確保を最優先して指示を出す必要があります。

・ 翌日の出勤時間帯に風雨が強まる場合は、在宅勤務にする、あるいは台風通過後に出勤するなどの指示を出す
・ 月曜日など、休日の翌日に風雨が強まる場合は、休前日に指示を行う
・会社に出勤後に風雨が急に強まった場合は、風雨がおさまるまで社員の帰宅を抑制し、必要に応じて宿泊などの対応も検討する など

これらの対応、特に在宅勤務や会社での宿泊などは、準備なしに実施できるものではありませんから、平常時から在宅勤務システムの構築、鉄道事業者による計画運休が行われる際のルールの策定、また会社での宿泊体制の準備などを進めておくことが求められます。

(3)休日・夜間における従業員の安全確保
台風などの接近は、平日の勤務時間帯に限らず、平日の夜間や休日に起こる可能性もあります。企業は、自宅にいる従業員やその家族の安全確保に向けて、次のような点を従業員に周知徹底しておきましょう。

①避難
2018年7月に発生した豪雨を教訓として、2019年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」の改定が行われています。
「警戒レベル」を用いた避難情報(表1)が発令されますから、避難のタイミングを逃さないよう速やかに避難することが重要です。特に、家族に高齢者や乳幼児など避難に時間がかかる人がいる場合は、「警戒レベル3」の段階で避難することが求められています。

(表1)「警戒レベル」を用いた避難情報

写真を拡大 (内閣府・防災情報のページを参考に筆者作成)

これらの避難情報に基づいて、高台にある避難所などに移動する水平避難が原則ですが、夜間で風雨が強く、避難に伴う危険が大きいと考えられる場合は、自宅の2階以上に垂直避難することも検討します。

これらの避難情報は、必ずしも「レベル1」から順番に発表されるとは限りません。また、過去の災害では、市町村からタイムリーな避難情報が発令されなかったケースもありました。自分の命は自分で守るという強い意識をもって、的確な避難行動をとりましょう。

②非常用持ち出し品
避難所に避難しようとする際、それから持ち出し品を準備していたのでは避難が遅れてしまう可能性があります。さっと持ち出せるようにあらかじめ非常持ち出しの物資を準備し、リュックなどの袋に入れておくことが大切です。

この袋の中には、避難所で救援物資などの準備が整うまでをしのげるように、飲料水や食料(そのまま食べられるもの)などを入れておくとよいでしょう。

【ここがポイント】

水害対策は、実際に台風などの風雨が強まるまでにどれだけ準備ができるかがポイントです。

1.人命、そして設備・機器を守るハード面の対策を事前に実施する
2.従業員を出社・退社のタイミングで危険にさらさない
3.休日・夜間における従業員の安全確保も忘れない

(了)