2019/11/21
昆正和のBCP研究室
■まったく別の切り口でRTOを決める方法もある
繰り返しになるが、RTOの導き方と目的は日本(BCP策定運用指針)と欧米とでは異なる。前者は「中核事業」という一つの概念に対して事業停止の許容時間内に製品やサービス供給を再開するためのタイミングを見定めるものだ。後者は複雑に配備されたおびただしい数の業務システムやアプリケーションのうち、どの業務で使用されているコンピュータとソフトウェア、そしてデータが最も重要なのかを特定するのが目的である。
これまでのところ、欧米のBCPのサンプルに、日本的な意味合いでRTOが使われているケースを筆者は見たことはない。ただしどちらのRTOにしても、推測に基づく目標値である以上、確実に達成できるという保証はない。むしろ努力目標として捉えてよいのではないだろうか。
なお、上に述べた2つのRTOの決め方以外に、より明確な根拠や外部からの要請をもとにRTOを決定できる場合もある。緊急時に人の命や健康、環境を守ったり、社会的使命を果たすために目標復旧時間を設定するのが望ましい業種や業務があるからだ。
例えば病院や高齢者介護福祉施設のBCPでは、緊急時の患者や入所者対応のための業務などに設定することができるだろう(直ちに対応、後回しなど)。危険物を扱う工場などでは、周囲への甚大な影響を避けるための緊急対応の時間指標(発災後5分以内、30分以内に実施すべき活動など)を設定するだろう。行政と災害時協力協定を結んでいる企業は、その使命を果たすために所定の日数内に業務を開始できるようにRTOを決めておくかもしれない。
こうした特定の業種や業務にとって必要なRTOは、ビジネス・インパクト分析からではなく、ビジネス慣行や環境への配慮、道徳倫理、法律や規制、サプライチェーンや行政からの要請などに基づいて決めるのが習わしとなっていることは言うまでもない。
(了)
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/10/28
-
-
-
-
-
月刊BCPリーダーズ2025年上半期事例集【永久保存版】
リスク対策.comは「月刊BCPリーダーズダイジェスト2025年上半期事例集」を発行しました。防災・BCP、リスクマネジメントに取り組む12社の事例を紹介しています。危機管理の実践イメージをつかむため、また昨今のリスク対策の動向をつかむための情報源としてお役立てください。
2025/10/24
-
-
「防災といえば応用地質」。リスクを可視化し災害に強い社会に貢献
地盤調査最大手の応用地質は、創業以来のミッションに位置付けてきた自然災害の軽減に向けてビジネス領域を拡大。保有するデータと専門知見にデジタル技術を組み合わせ、災害リスクを可視化して防災・BCPのあらゆる領域・フェーズをサポートします。天野洋文社長に今後の事業戦略を聞きました。
2025/10/20
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方