2019/11/20
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
意思決定に使える豊富な情報を生かす
気象情報や防災情報を利用して自ら判断できる力を磨いていくのが最大の近道です。そもそも避難勧告や河川の水位に関する情報などは防災情報や気象情報の中のごく一部です。限られた情報だけを使って意思決定をしようとしているところに実は問題があります。
避難勧告や水位に関する情報など以外にも自ら危険性を判断するために使うことができる情報は次のようにいくつもあります。
・気象ニュースや気象庁の記者発表などで伝えられる雨量の見込み
・これまでに降った雨の量や今後の雨の量に関する情報
・気象レーダーに映る雨雲の様子や今後の雨域の見込み
・河川水位の上昇具合
・内水氾濫や中小河川の外水氾濫が起こる可能性を示す情報
・土砂災害が起こる可能性を示す情報
・暴風のピークに関する情報 など
これらの情報の多くは気象庁のホームページなどを利用して入手することができます。ただし、受け身的に情報を待つのではなく、自分から積極的に取りに行くという主体性が必須です。
危険性を把握するための情報として例に挙げた情報の中には意思決定や体制判断の基準に組み込むことが難しい情報もあるかもしれません。読み取るのに多少の習熟がいる情報もあるでしょう。しかし、だからと言って自ら情報にアクセスすることなく意思決定をするのは目隠しをしながら判断するようなものでお勧めできません。
さまざまな気象情報を通じて迫り来る危険を察知できるようになると、避難勧告や警報などといった「伝えられた情報」のみをただ使う場合に比べて、大局的な判断や、確信を持った判断ができるようになります。危機管理の担当者として、ぜひそうしたレベルで情報を使ってもらいたいと願っています。
まとめ:災害の危険性を見抜くために積極的・能動的に気象情報を使おう
今回の記事ではまずは気象情報との向き合い方についてテーマにしてきました。ぜひ覚えておいてほしいことは、「伝えられる情報を使うだけが防災対策ではない」ということです。受け身的に情報を利用する限り、手持ちの判断材料が非常に限られた中で意思決定をしなければならない状況に自らを追い込んでしまいます。また、情報の出し手側の成否にあなたの対応も引きずられてしまいます。気象情報や防災情報を積極的・能動的に使っていくことで、このような制約をぜひ打ち破っていってください。
気象情報を積極的・能動的に使うための具体的な方法については今後の記事の中で随時ご紹介していきます。
(了)
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識の他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方