2016/12/14
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
1、発災直後、トイレに水を流すのはNGです!
熊本地震のとき、昨年東京都が発行した「東京防災」のトイレについての左のページが多数シェアされていました。それを見て、以前に防災講座に参加してくださった方から、「これを実践したら大変なことになりませんか?」とメールが速攻きました。何が大変なことになるかわかりますか?
「東京防災」では洋式でも和式でも、「断水していても排水できる場合は、バケツ一杯の水で排泄物を流すことが可能」とあります。
しかし、「発災直後は、トイレに水は流さない方がよい!」というのがパネルディスカッション登壇者共通の意見です。
イラストのように、バケツで水が調達できる場合であっても、トイレタンクに1回分の水が残っている場合であっても、水は流さない方がよいのです。なぜでしょうか?
特にマンションが問題になります。日本トイレ研究所の加藤さんによると「地震で排水管が損傷を受けやすい」とのことです。外部から見てもわかりません。被災地ではマンションの上の階の人がトイレを流すと、排水管が損傷していて下の階で水漏れが発生したケースがあるのです。「水が潤沢にあろうとも流さない方がよい!」それを常識にしてください!
私がこれを、「まちみらい千代田」(https://www.mm-chiyoda.or.jp)で講演しようとしたら、すでに「発災直後に水はあってもトイレに流さないほうがよい」という知見がシェアされていました。千代田区では、災害対策としてマンション理事さんの横のつながりづくりを重視されてたために、すでに勉強済みだったのです♪
「発災直後は、トイレに水は流さない方がよい!」。このことは皆さんのマンションや職場で、常識になっていますか?
特に下の階の方。マンションでの防災を他人ごとだと思っていたら、困ることになりますよ!マンション理事会や総会で話し合ったり、みなで情報を共有してくださいね♪
参加者の方から、マンションの全員に徹底するため、トイレ内に貼っておけるようなお知らせを配布したいとのアイデアがだされていました!
そもそも、なぜ、地震で、水を流してもよいかのように伝わってしまったのでしょうね。推測でしかありませんが、地震で水を流して大丈夫だった人が「大丈夫な事例」を広げた一方で、マンションでのトイレの損壊は資産価値の問題もあり、情報が拡散されなかったこと。また、排水管は壊れていない「一般的な断水や停電」の対策が地震対策と誤解されて広がってしまったことがあるかもしれません。
TOTOなどトイレメーカーのHPには、緊急時の対策として水を流す方法が書かれています。
http://www.toto.co.jp/aftersupport/dansui_teiden/dansui.htm
TOTO広報部にお聞きしたところ「インフラが壊れた場合の対策ではなく、断水や停電時に、トイレメーカーとして、便器から外に出す方法のご案内」ということです。最近の節水タイプトイレでは、電気で水を流すものが多いので、やりかたを間違えると詰まらせてしまうからです。排水管が壊れた場合の処置の案内ではありませんので、ご注意を!
「東京防災」では、「在宅避難」のページ(55P)に上図のように書いていますが、前述の流せるイラスト(200P)のほうが大きく書かれているので、誤解されている人が多いです。下水があふれるなど目にみえた被害がなくても、排水管が壊れているケースがあるので「確認がとれない段階では、水を流さず備蓄してある災害用トイレを使用!」を徹底していただきたいです♪
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