2020/02/04
医師が語る感染症への知識のワクチン
症状
ノロウイルスによる感染症の症状は主に嘔気・嘔吐、下痢、腹痛です。どちらかというと小児では嘔吐が多く、成人では下痢が多いと言われています。微熱をともなうこともあります。
潜伏期間は1~2日で、元々他の病気がある人では長引くこともありますが、通常は症状の持続期間は短く、数日以内(平均1~2日)には軽快すると言われています。高齢者では吐瀉物の誤嚥(ごえん)により肺炎などを起こすこともまれにあります。
また、ノロウイルスは不顕性感染といって、感染したにもかかわらず症状がない場合があります。しかし無症状であっても便中にウイルスを排出していることが多く、とくに食品を扱う人は注意が必要です。
診断
ノロウイルスの診断は、便の中のウイルスを検出することで確定できます。その方法にはいくつかあります。
一つは抗原簡易検査(イムノクロマトなど)といって、抗原反応でウイルスの核の蛋白を検出する方法です。これは短時間で判定ができますが、感度は低いと言われています。もう一つはリアルタイムRT-PCR法などを用いてウイルスの遺伝子を同定する方法です。これは感度の高い方法ですが、判定までに時間がかかります。
ノロウイルスの抗原簡易検査は3歳未満と65歳以上、免疫力の低下した患者に対しては保険で検査ができますが、それ以外の人は保険診療では検査できないことになっています。
感染経路、感染力
主な感染経路は経口感染です。感染しているヒトの便や吐瀉物から手などを介して感染する場合や、ノロウイルス感染者の吐瀉物や下痢便の中のノロウイルスを吸い込んで感染する飛沫感染も報告されています。
また、ノロウイルスで汚染された食物を食べることによって感染することもあります。特に牡蛎で感染することは知られています。牡蛎だけでなく、火のよく通っていない2枚貝を食べて感染することもあります。通常は生食用とされている牡蛎でもノロウイルスがいることがあり、感染を起こすことがあります。
なぜ2枚貝での感染が起こり、巻き貝ではほとんどないかというと、2枚貝は海水をこしとって海水中のプランクトンを食べるためです。牡蛎は1日約200リットルの海水をこしとっているとされていますが、ノロウイルスは下水の流れ込む河口付近に多く浮遊しているため、このあたりに棲む2枚貝はノロウイルスを取り込みやすいといわれています。巻き貝は海水を濾過するのではなく、海藻を食べているため体にノロウイルスをため込むことは少ないとされています。
感染した人の便中に排出されたウイルスは、汚水処理場で処理されるはずですが、ウイルス自体が非常に小さいために処理しきれないで河川に流され、最終的に海に流れ出て、牡蠣などの2枚貝に入り込み、それを食べた人が感染するという循環があるとされています。
ノロウイルスは感染力が非常に強いといわれており、ウイルスの数が少なくても感染源になることが、感染がなかなか収束しない原因です。冷凍しても感染力は落ちず、乾燥したままで20日以上は感染力が持続するとされています。
さらにノロウイルスは、一度人の体内に入るとウイルスの排出期間も長いことが知られています。感染後3週間経過しても約25%の人から排出されていますし、長い場合は1カ月以上にわたり排出するとされています。
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
- 【最終回】食中毒への備え
- マイコプラズマ感染症への備え
- 溶連菌感染症への備え
- ノロウイルス感染症への備え
- インフル、予防の基本は手洗いとうがい
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方