2020/02/04
医師が語る感染症への知識のワクチン
2.予防
ノロウイルスには、予防のためのワクチンはありません。予防は容易ではないですが、日々の流水による手洗いが最も大切です。

ノロウイルス感染症に感染した人の吐瀉物や下痢便には、ノロウイルスが大量に含まれていますが、ノロウイルスはわずかな量のウイルスが体内に入っただけでも容易に感染します。また、ノロウイルスは塩素系消毒剤でなければ消毒できません(細菌感染の防御によく用いられる塩化ベンザルコニウムは無効ですし、最近消毒効果があるアルコールも市販されてきましたが、アルコール消毒薬は効果が低い場合が多いといわれています)。
吐瀉物や下痢便の処理に際しては、あらかじめ塩素系消毒剤(ハイターなどを薄めたもの)に浸したペーパータオル等で覆い、そのままビニール袋に入れて密封し、破棄するなどの措置が必要です。また飛沫も発生するため、処理時には手袋の他にマスクが必要です。
予防はこまめな手洗いほのか、2枚貝の十分な加熱処理(食物の中心部が85℃~90℃になって90秒以上の加熱)、吐瀉物や下痢便の適切な処理などが大切です。
また、食品工場で働く方、保育園・介護施設の調理師の方、学校や職場の給食の調理員の方などは、感染の疑いが少しでもある場合(下痢の症状があったり、家族がノロウイルスにかかったなど感染者と接触する機会があった場合)は、症状がなくてもノロウイルス検査を行うことが必要です。
3.感染した場合の対策・治療
ノロウイルスに感染した場合、特に固有の抗ウイルス剤などの治療があるわけではありません。対症療法として水分や栄養の補給が行われます。ただし高齢者や乳幼児では脱水が高度になり輸液が必要になることもありますので、注意が必要です。
下痢症状が強くても、強い下痢止めはウイルスの腸管内への停滞が起こることがあり、推奨されていません。上記にも述べましたように、手に着いたウイルスや吐瀉物、便にいるウイルスが他人へ感染しないようくい止めることが最も大切な対策となります。
(了)
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
- 【最終回】食中毒への備え
- マイコプラズマ感染症への備え
- 溶連菌感染症への備え
- ノロウイルス感染症への備え
- インフル、予防の基本は手洗いとうがい
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方